最新記事

伝染病

エボラ蔓延の真の元凶は文化格差

2014年8月25日(月)12時19分
インドラニ・バス

 ロンドンを拠点とするシンクタンク海外開発研究所(ODI)の研究者リサ・デニーは、エボラ熱は致死率が高いため、多くの人が治療を受けても無駄だと考えていることも問題だと指摘する。

 彼女と同僚のリチャード・マレットは、栄養失調に関する調査の一環でシエラレオネを訪れた。住民たちと交流するうちに彼らは、エボラ熱に付きまとう汚名も人々が治療をためらう大きな要因であることに気付いた。感染性が高いため、住民は感染者と判明した人には寄り付こうとしなくなる。

 治療に対する不信感を和らげ、地元との協力関係を強化するには、地域に根差した祈祷師や宗教指導者と手を結ぶしかないと、マレットは言う。シエラレオネでの現在の取り組みは公共の医療機関に偏っているため、「もっと古くから地域に根付いている経路」を活用すべきだと、彼は指摘する。

 地元のリーダーであれ、地域の医療関係者であれ、エボラ熱の予防と治療に携わるすべての人々が同じメッセージを発信することが極めて重要だと研究者たちは考えている。政府の支援活動には「住民たちの行動に影響を及ぼすあらゆる人を取り込むような、幅広い対策を取る必要がある」と、ODIのデニーは言う。

 西アフリカの伝統的な葬儀にまつわる風習も、エボラ熱封じ込めの障害になっている。埋葬前に大勢の人が遺体を洗って清めることが多いのだ。

「文化的な慣習は根強い」と、マレットは言う。「何世代も受け継がれてきたことをやめさせることは、非常に難しい」

感染抑止のゴールは遠い

 ユニセフではラジオ番組を放送し、エボラ熱についての意識の向上を図り、感染を予防する方法を広めようとしている。MSFも医療センターや隔離施設内部の様子を紹介するビデオを制作し、住民たちの恐怖心を和らげようとしている。

 ほかにもさまざまな組織が協力して、住民の不安を和らげるために活動している。赤十字やMSF、国連機関の関係者など合わせて約150人が、西アフリカ各地で感染拡大を食い止めるために活動している。赤十字国際委員会のスタッフは各地を回り、村の中央の広場で住民に呼び掛けを行っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

オーストラリア、軍用無人機「ゴーストバット」発注 

ビジネス

豪中銀、予想通り政策金利据え置き インフレリスク警

ワールド

EU、環境報告規則をさらに緩和へ 10日草案公表

ワールド

中国外相「日本が軍事的に脅かしている」、独外相との
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 10
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中