エボラ蔓延の真の元凶は文化格差
ロンドンを拠点とするシンクタンク海外開発研究所(ODI)の研究者リサ・デニーは、エボラ熱は致死率が高いため、多くの人が治療を受けても無駄だと考えていることも問題だと指摘する。
彼女と同僚のリチャード・マレットは、栄養失調に関する調査の一環でシエラレオネを訪れた。住民たちと交流するうちに彼らは、エボラ熱に付きまとう汚名も人々が治療をためらう大きな要因であることに気付いた。感染性が高いため、住民は感染者と判明した人には寄り付こうとしなくなる。
治療に対する不信感を和らげ、地元との協力関係を強化するには、地域に根差した祈祷師や宗教指導者と手を結ぶしかないと、マレットは言う。シエラレオネでの現在の取り組みは公共の医療機関に偏っているため、「もっと古くから地域に根付いている経路」を活用すべきだと、彼は指摘する。
地元のリーダーであれ、地域の医療関係者であれ、エボラ熱の予防と治療に携わるすべての人々が同じメッセージを発信することが極めて重要だと研究者たちは考えている。政府の支援活動には「住民たちの行動に影響を及ぼすあらゆる人を取り込むような、幅広い対策を取る必要がある」と、ODIのデニーは言う。
西アフリカの伝統的な葬儀にまつわる風習も、エボラ熱封じ込めの障害になっている。埋葬前に大勢の人が遺体を洗って清めることが多いのだ。
「文化的な慣習は根強い」と、マレットは言う。「何世代も受け継がれてきたことをやめさせることは、非常に難しい」
感染抑止のゴールは遠い
ユニセフではラジオ番組を放送し、エボラ熱についての意識の向上を図り、感染を予防する方法を広めようとしている。MSFも医療センターや隔離施設内部の様子を紹介するビデオを制作し、住民たちの恐怖心を和らげようとしている。
ほかにもさまざまな組織が協力して、住民の不安を和らげるために活動している。赤十字やMSF、国連機関の関係者など合わせて約150人が、西アフリカ各地で感染拡大を食い止めるために活動している。赤十字国際委員会のスタッフは各地を回り、村の中央の広場で住民に呼び掛けを行っている。