最新記事

日本外交

中国に逆らい日本を支持したフィリピンの思惑

アキノ大統領が東南アジア諸国で初めて「侵略国」日本の集団的自衛権を積極支持

2014年7月11日(金)12時32分
シャノン・ティエジー

中国は共通の敵? 日本の首相官邸で笑顔を交わすアキノと安倍 Yuya Shino-Reuters

 先週行われた日本の安倍晋三首相との会談で、フィリピンのアキノ大統領は集団的自衛権行使を容認する日本国憲法の解釈変更に支持を表明した。安倍率いる与党・自民党は憲法9条の解釈変更の閣議決定を目指しており、これによって有事の際に日本が同盟国を援護することが可能となる。

 アキノは安全保障における日本の役割強化を歓迎。「日本国民もそれを望んでいる」ことを前提に「国際的義務を果たす日本の能力が強化され、両国の共通目標である平和、安定、相互繁栄という目標達成に近づくならば、フィリピンは日本国憲法を見直すいかなる提案にも警戒の念は抱かない」と、記者団に語った。「日本政府が他国を助ける力を得れば、善意の国家にとっては恩恵あるのみだ」とも。

 両国ともアメリカの同盟国。日本がアジアで軍事力を強化すればフィリピンの国益にもなるとの考えを明らかにしたものだ。

 首脳会談後には広島市で行われたミンダナオ和平会議に出席。アキノは演説で、3月に調印したフィリピン政府と南部ミンダナオ島の反政府武装勢力モロ・イスラム解放戦線(MILF)との間の和平合意に対する日本の積極的支援に謝意を表した。

 特に、日本が仲介して日本で行ったアキノとムラド・エブラヒムMILF議長との交渉が和平への転換点になったとして、日本の貢献の重要性を強調した。
「過去のとりこになるな」

 日本政府は、歴史問題を乗り越えてアジア太平洋地域の平和と安定に貢献する用意ができている──こうしたアメリカの見方をフィリピンも共有していることは明らかだ。演説の締めくくりとして、アキノは日本人に「過去のとりこにならない」ように呼び掛けた。これは、第二次大戦の歴史を蒸し返しては日本への警戒心をあおる中国政府への当てこすりかもしれない。

 安倍は、アジア太平洋の環境が「ますます厳しい」なか、日本とフィリピンは連携を強化していると言った。両首脳は法の支配による海洋紛争解決の重要性を強調。南シナ海と東シナ海における挑発と違法行為で非難を浴びる中国政府を暗に牽制する形となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中