最新記事

サイエンス

今度は中国のごみが宇宙を汚す

2013年10月18日(金)17時11分
ウィルソン・フォーンディック(米海軍少佐)

中国も含めた国際協調を

 07年1月、中国は直径10センチを超えるデブリを一気に10%も増やした。四川省から衛星攻撃兵器を打ち上げ、老朽化していた気象衛星・風雲1号C型衛星を破壊する実験によって、2500個以上のデブリを発生させたためだ。

 中国は国際社会から非難を浴びた。しかしマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者ジェフリー・フォーデンによれば、中国が衛星攻撃実験を停止することは考えにくい。

 NASAによれば、衝突や実験で発生したデブリが降下して大気圏に入るまでには100年以上かかる。その間ずっと、宇宙船や宇宙飛行士は危険にさらされる。

 中国の07年の実験で生じたデブリが、6年後の今年1月にロシアの超小型衛星BLITSと衝突。重さ7・5キロのロシアの衛星は破壊されてしまった。ロシアは72年に発効した宇宙損害責任条約に基づいて中国に賠償を求めることもできたが、そうはしなかった。

 中国もデブリ問題の存在は認めており、スペースデブリ調整委員会(IADC)などを含むいくつかの国際機関に加盟している。

 しかし中国国家航天局のウェブサイトの英語版を見ても、デブリ問題への取り組みは大きく取り上げられていない。中国語のページにはこの記事を書いている時点で、なぜかアメリカ由来の軌道上デブリの統計へのリンクがあった。今のままでは中国はアメリカを追い越し、最大の「デブリ発生国」になるかもしれないのだが。

 各国が協調してデブリ問題に取り組むチャンスは多々あるはずだ。出発点になりそうなのは、各国が宇宙計画の策定や宇宙船の建造に当たってデブリを減らす努力をするようなインセンティブを設けることだ。

 次に、これははるかに難しい目標になるだろうが、衛星攻撃兵器とその実験を禁止することだ。幸い、取り組みはもう始まっている。

 国際社会がデブリ問題に真剣に取り組まなければ、『ゼロ・グラビティ』のような危機が現実に起きる恐れがある。その時の主役はもしかすると、中国の宇宙飛行士かもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ」が物議...SNSで賛否続出
  • 4
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 8
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 9
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 10
    高市首相の「台湾有事」発言、経済への本当の影響度.…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中