最新記事

中国

「反中」台湾出身作家vs歌舞伎町案内人<2>

2013年4月11日(木)12時50分
構成、本誌・長岡義博

黄文雄氏黄:私は逆で、現在より未来が大事。われわれの世代より次の世代が大事。中国よりも世界全体がどうか、ということを常に考えています。
 私は中国が今後、民主化するのは100%不可能だと思ってます。むしろ独裁を強化していかないといけない。人類の歴史を見るかぎり、民主主義から帝国主義に「進化」した歴史があります。古代ギリシャからローマがそうですが、中国も実はこれに近い。
 春秋戦国時代(編集部注:紀元前770年〜同221年)には言論の自由があり、唐朝(同:618年〜907年)には三権分立があったのですが、その後宋朝(960年〜1279年)で独裁になった。実はいまの共産党体制は中国史のなかで一番進化した独裁体制なんです。

李:日本の江戸時代だって武士が支配する「軍事独裁政権」じゃないですか?

黄:それは大きな間違い。当時は朱子学が国教的な扱いを受けていましたが、それ以外に神道もあれば仏教もあり、朱子学と相容れない陽明学のような考えもある。蘭学もある。江戸時代は多様で多元な時代でした。
 そもそも日本の天皇制は天皇と将軍に権威と権力を分けるシステム。江戸時代の日本は当時、もっとも世界で確立された法治国家でした。大名であろうと農民であろうと、従うのは法律。環境も政治も今に負けないぐらい進んだ社会だった。

李小牧氏李:日本は確かに今でも神道も仏教も何でも受け入れる多様な社会です。私は天皇も1つの宗教だと思う。ただ日本のテレビや新聞は天皇陛下に触れたがらない。言論の自由のある国でタブーがあるのはよくないです。中国人の眼から見て不思議なのは、戦争が終わった後アメリカはどうして天皇を戦犯にしなかったか、ということ。それは国民に人気のある天皇の力を利用して日本を統治しようと考えたからでしょう?

黄:われわれはまず歴史を見ないといけない。20世紀の歴史は社会主義の歴史です。ただロシアと中国で成功した共産主義革命は日本では実現しなかった。世界で共産主義革命が成功したのは、キリスト教では東方正教会の国々だけ。アジアで成功したのは儒教文化圏の国だけでした。その後スラブ系の国々の共産主義は崩壊したが、アジアの儒教圏の国では、ベトナムでも中国でも北朝鮮でも一応まだ共産主義は続いている。看板と中身は違いますが。
 日本で成功しなかったのは、仏教文化圏の国だから。中国にもかつて日本と同じような多様な考え方を認める長江文明がありましたが、それが儒教文化である黄河文明に滅ぼされた。なぜ中国で長江文明に代わって儒教文化が主流になったかというと、豊かな自然が崩壊したことと関係しています。

李:それはその通り。今の中国は自然はもちろん、宗教は一切ない。仏教を日本に伝えたのは中国ですが、一切ない。チベット仏教はもっとない。
 私はこれからの中国が心配。私の25年と黄さんの50年を合わせて75年(笑)。これは冗談ですが、日本と台湾の知恵を合わせてなんとか中国をよく出来ないでしょうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

SBI新生銀行、東京証券取引所への再上場を申請

ワールド

ルビオ米国務長官、中国の王外相ときょう会談へ 対面

ビジネス

英生産者物価、従来想定より大幅上昇か 統計局が数字

ワールド

トランプ氏、カナダに35%関税 他の大半の国は「一
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中