最新記事

超大国

中国はアメリカと同じ位「ならず者」

2010年10月22日(金)17時54分
スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ケネディ行政大学院教授=国際関係論)

 例えばアメリカは国連憲章の作成を手助けしたにも関わらず、国連安全保障理事会の承認がないまま99年にはセルビアと、03年にはイラクと戦争を行った。国連憲章にのっとればアメリカの行為は違法だ。同様にアメリカは第2次大戦後、1オンス35ドルと定めたブレトンウッズ協定をつくるのに主導的な役割を果たしたが、この協定がアメリカにとって役に立たなくなると、71年に金本位制を放棄した。

 東シナ海で発生した中国人船長の拘束事件やレアアース禁輸問題から学ぶべき本当の教訓は、大国が必要だと感じたときにはルールを無視し、大抵の場合はそれで済んでしまうものだということ。中国の指導者たちはアメリカや世界全体にとっていい政策だろうがなかろうが、これまでの基準やルールに一致していようがいまいが、彼らが有益だと信じる政策を追い求める――そう考えるべきだ。

 中国と我々の利益が激しく対立することが少なからずあるのははっきりしている。中国の指導者は時に自分たちの利益を注意深く計算し、それを達成するため優れた政策を実施する。大損害を出すような失敗をすることもあるだろう。アメリカ政府の指導者たちと同じだ。見識と洞察力にあふれた行動をするときもあれば、軽率につまずいて惨事を引き起こすこともある。

 それが現実だ。要は十分に「責任ある」行動ができていないアメリカが、中国に「責任ある」行動を求めるのは賢明でも有益でもない、ということ。キューバのグアンタナモ収容所で裁判をすることなく外国人を拘束し、アルカイダが潜伏していると思われる国に無人戦闘機でミサイルを落としているのは中国ではなくアメリカだ。

Reprinted with permission from "FP Passport", 21/10/2010. © 2010 by The Washington Post Company.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中