最新記事

都市,上海,万博

新上海、情熱の源を追う

2010年4月28日(水)12時30分
サイモン・クレイグ

 先日、アルマーニの店で、上海の弁護士が3000ドルのスーツを買おうかどうか迷っていた。「高いね」と、彼は袖をなぞりながら言った。「でも、この品質にはかえられない」

「中国は『人生を楽しむ』という考え方を知ったばかりだ」と、外灘三号の共同経営者ハンデル・リーは言う。「消費は浅はかだ、退廃だという罪の意識なしで消費を楽しむ自由を、初めて味わっている」

 だがリーも認めるように、1着の服に数百から数千ドルを払える上海市民は、ごく限られている。さらに、深刻になる都市問題に対し、市当局は努力が足りないという批判も少なくない。

 北京大軍経済観察研究センターの王煉利(ワン・リエンリー)によると、上海市民の12
%を占める最富裕層が居住する面積は、50%を占める最貧困層が居住する面積と、だいたい同じだという。

「本当に市民のための開発なのか、政府は考えるべきだ」と、王は言う。王はまた、世界博覧会など大型プロジェクトのために市民を移住させたことが、地域社会から活力を奪っていると警告する。

芸術家と投資家がコラボレートする街

 だが、社会の発展のあり方を提起するこうした衝突さえ、上海にエネルギーを与えている。上海の資本主義精神はますます富を生み、芸術を育てるカネと市場をもたらしている。

 上海では近く、エルトン・ジョン、イギリスのロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、そしてニューヨークのリンカーン・センターのアフロラテン・ジャズ・オーケストラの公演が予定されている。テニスのハイネケン・オープン上海には世界中からプロ選手が集まり、12月にはニューヨークの劇団が『オペラ座の怪人』を上演する。

「一つの都市にとって、文化は最も魅力的な要素だ」と、文広局の張は言う。

 上海多倫現代美術館の学芸員を務める沈其斌(シェン・チーピン)も賛成する。沈は美術館で小学生向けのツアーを行っている。「美術を愛し、理解する世代を育てるのに役立つだろう」

 上海の芸術家や建築家、投資家は猛烈な勢いで変わり続け、中国と世界に与える影響も大きくなり続けている(棉の本は8カ国語に翻訳された)。そして上海は、文化の中心として、すでに北京と肩を並べるまでになった。

「10年か15年後には、上海はアジアで最も住みたい都市になるだろう」と、建築家のキャッツは言う。

 中国が世界レベルの文明として復活するうえで、上海は一つの核になるはずだと、アーティストの薜松は言う。先見の明のある技術官僚と、ビジネスにたけた投資家とともに、この街の芸術家やデザイナーは力強く成長しはじめた。

 薜のロフト風のスタジオは、もうすぐ改装が終わる。友人の秦一峰の愛車は、ジープのチェロキーだ。「上海はグローバル文化の一つの中心になりつつある」と、薜は言う。

 東洋の真珠が、再び輝きはじめている。

[2004年10月 6日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

〔情報BOX〕米・イスラエルがイラン攻撃、国際社会

ワールド

高市首相、経済的な影響の洗い出し指示 イラン情勢で

ワールド

ロシア、米・イスラエルのイラン攻撃を非難 「再び危

ワールド

再送-マクロン仏大統領、イラン問題で国連安保理の緊
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍事工場を攻撃...「着弾の瞬間」を捉えた衝撃映像を公開
  • 3
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKIが語った創作と人生の覚悟
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 6
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 7
    トランプがイランを攻撃する日
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「一人旅が危険な国」ランキン…
  • 10
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 8
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 9
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中