新上海、情熱の源を追う
先日、アルマーニの店で、上海の弁護士が3000ドルのスーツを買おうかどうか迷っていた。「高いね」と、彼は袖をなぞりながら言った。「でも、この品質にはかえられない」
「中国は『人生を楽しむ』という考え方を知ったばかりだ」と、外灘三号の共同経営者ハンデル・リーは言う。「消費は浅はかだ、退廃だという罪の意識なしで消費を楽しむ自由を、初めて味わっている」
だがリーも認めるように、1着の服に数百から数千ドルを払える上海市民は、ごく限られている。さらに、深刻になる都市問題に対し、市当局は努力が足りないという批判も少なくない。
北京大軍経済観察研究センターの王煉利(ワン・リエンリー)によると、上海市民の12
%を占める最富裕層が居住する面積は、50%を占める最貧困層が居住する面積と、だいたい同じだという。
「本当に市民のための開発なのか、政府は考えるべきだ」と、王は言う。王はまた、世界博覧会など大型プロジェクトのために市民を移住させたことが、地域社会から活力を奪っていると警告する。
芸術家と投資家がコラボレートする街
だが、社会の発展のあり方を提起するこうした衝突さえ、上海にエネルギーを与えている。上海の資本主義精神はますます富を生み、芸術を育てるカネと市場をもたらしている。
上海では近く、エルトン・ジョン、イギリスのロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、そしてニューヨークのリンカーン・センターのアフロラテン・ジャズ・オーケストラの公演が予定されている。テニスのハイネケン・オープン上海には世界中からプロ選手が集まり、12月にはニューヨークの劇団が『オペラ座の怪人』を上演する。
「一つの都市にとって、文化は最も魅力的な要素だ」と、文広局の張は言う。
上海多倫現代美術館の学芸員を務める沈其斌(シェン・チーピン)も賛成する。沈は美術館で小学生向けのツアーを行っている。「美術を愛し、理解する世代を育てるのに役立つだろう」
上海の芸術家や建築家、投資家は猛烈な勢いで変わり続け、中国と世界に与える影響も大きくなり続けている(棉の本は8カ国語に翻訳された)。そして上海は、文化の中心として、すでに北京と肩を並べるまでになった。
「10年か15年後には、上海はアジアで最も住みたい都市になるだろう」と、建築家のキャッツは言う。
中国が世界レベルの文明として復活するうえで、上海は一つの核になるはずだと、アーティストの薜松は言う。先見の明のある技術官僚と、ビジネスにたけた投資家とともに、この街の芸術家やデザイナーは力強く成長しはじめた。
薜のロフト風のスタジオは、もうすぐ改装が終わる。友人の秦一峰の愛車は、ジープのチェロキーだ。「上海はグローバル文化の一つの中心になりつつある」と、薜は言う。
東洋の真珠が、再び輝きはじめている。
[2004年10月 6日号掲載]