グラミン銀行は貧困を救えない
だが市場経済をもとにした現実的なやり方で、貧困人口にも利用可能な潤沢な「資本プール」をつくる方法がある。それはマイクロモーゲージ、つまり担保付きの低利・長期・小口融資だ。
これなら政府は最低限の法改正を行うだけでいい。そのうえで登記所を設置し、民間企業に登記申請処理の代行免許を与えて貧困層の財産登記を促す。こうすればマイクロモーゲージのプロセスは自立的となる。
例えばメキシコに貧しい男がいるとする。彼は自分が住んでいる家の権利書を持っていないし、その家は住所登録もしていない。そこで彼は地元の銀行に行って、自分の家の登記申請をする。銀行にしてみればこの男は将来の潜在的な融資先。だから積極的に彼の家を調べて、物件の図面作成を手伝い、その情報を登記申請するだろう。すべては男が銀行から融資を受け、手数料を支払うことを期待してのことだ。
資本市場を利用した貧困解決を
次に銀行は、国の正式な電子登記簿に登記するため男の情報を政府に提出する。申請が受理されれば、男は銀行から不動産に関する権利証書をもらえる。これで銀行は安心して男に融資することができる。男にしてみれば若干の手数料を払わなければならないが、それを差し引いた金額はすぐに借りることができる。
デソトの試算では、メキシコの貧困人口の凍結資産は3000億ドルを超える。最新の登記所設置によってマイクロモーゲージを簡単に組めるようになれば、企業にも貧困層にも大きな経済的恩恵がもたらされるし、政府に大きなリスクやコストは生じない。
ユヌスとデソトは、貧困層が貧困から脱却する方法について優れた見識を示した。ユヌスは彼らが融資を必要としていることを、デソトは彼らが経済に正式に参加する必要性を示した。その2人のアイデアを組み合わせることで、その狙いを実現するより現実的な方法を生み出すことができる。世界の貧困人口が正式な権利書を基に民間資本から資金調達できれば、9兆ドル問題は本当に解決するだろう。
(筆者は、貧困国で活動する不動産所有権サービス会社社長で『中南米は競争できるか』の共著者)
Reprinted with permission from www.ForeignPolicy.com, 26/08/2009. ©2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.