英語習得のコツは実はシンプル! 「簡単な本の音読」に効果アリ
読書スピードが読解力を左右する
英語を読むスピードが遅い子どもは、単語を正確に発音することに集中しており、内容理解まで意識が向きません。NICHD(National Institute of Child Health and Human Development/国立子どもの健康と発達研究所」の元所長リード・リヨン教育学博士(Reid Lyon)は、読書スピードと読解力の関係について次のように述べています。
「自転車に十分なスピードで乗らないと転ぶのと同様、読み手が十分なスピードで文字を認識できなければ、意味が失われてしまう。読んだ内容を思い出すことができず、ましてや読んだ内容を自分の経験や背景知識と関連付けることなどできない」
読書が苦手という子どもは、本や教科書を読んでいても、内容が全然頭に入っていきません。読んでいる間に、読んだことをどんどん忘れてしまうのです。これはワーキングメモリーの機能が弱いために起こる現象です。
ワーキングメモリー(working memory/作業記憶)とは、短い時間に心の中で情報を記憶し、同時に処理(理解)する能力のことで、読解力の基礎となる重要な能力です。ワーキングメモリーを鍛えるには、音読練習によってディコーディングスキル(識字力)を向上させる取り組みが効果的です。
近年、日本の国語教育において「音読が読解力を高める」ことが知られてきましたが、英語もまったく同じです。英語力を伸ばしたければ、単語の意味や文法ルールを覚えたり、解釈の技術を学ぶ前に「英語を流ちょうに読む練習」を取り入れることが不可欠なのです。
ちなみに、子ども・大人を含めた英語話者の平均音読スピードは1分間に120単語です。早口で不明瞭に読むのではなく、聞き手が理解できるスピードで、ひとつひとつの単語を正確に、かつ、感情表現を伴って音読できる平均値です。 (NAAL/National Assessment of Adult Literacy調べ)
日本の学校英語教育では「英語を流ちょうに読む訓練」はほとんど取り入れられていません。流ちょうに英語を読むことよりも、文法訳読が重視され過ぎていることが日本人の英語力を停滞させている原因であると私は考えています。
読みの流ちょうさが身につく本とは?
英語圏では子どもの文字学習は「フォニックス」でスタートします。フォニックスは英語の「ひらがな」であり、「A=ア」「B=ブッ」「C=クッ」というようにアルファベット26文字と音の関係を教える指導です。
フォニックスは単語を分解して、構成する文字をひとつひとつ音声化する方法を教えるため( CATであればC=ク、A=ア、T=トゥッという要領)多くの子どもが「拾い読み」をするという欠点があります。
日本語でもひらがなを習い始めの子どもは「拾い読み」をしますね。同様に英語でもフォニックスを習いたての子は「拾い読み」をするのです。読みの流ちょうさを身につけるには、拾い読みから脱出して、単語やフレーズを一目で読めるように訓練しなければなりません。
これを実現するために有効な方法が「音読」です。子どもにとって読みやすい簡単な英語で書かれた短い文章の音読練習を繰り返すことで、英語の頻出単語(サイトワーズと呼ぶ)が一目で読めるようになり、読書スピードを向上させることができます。
英語はよく使われる単語=サイトワーズが明快な言語です。あらゆる活字化された英語のうち「50%は頻出上位100単語のサイトワーズ」で、そして「65〜70%は頻出上位300単語のサイトワーズ」で構成されていると言われています。