ソフトスキル後発国の日本人がグローバルで生き残るためにできること
コミュニケーションで考える習慣をつける
ソフトスキルの育成は対人コミュニケーションを通して「考える習慣」をつけることから始まります。アメリカの子どもたちは、学校で教育されるまでもなく、家庭でソフトスキルを身につけていきます。学校で思考技術を学んだ親が子どもを育てるわけですから、子どもとの対話の中で「考える習慣」の訓練がごく自然に行われているのです。
アメリカ人の親を観察していると、子どもとの会話に「なぜ?」「どうして?」「もし〜だったら?」「どうしたら解決できると思う?」という「問い」を頻繁に織り込んでいることがわかります。親が「問い」を増やすことで、子どもは「なぜだろう?」と深く思考し、自分の考えを言葉に置き換えて表現する習慣を身につけることができます。
「日曜日に何をしたい?」と子どもに聞けば、「公園に行きたい!」と答えます。すかさず「どうして公園に行きたいの?」と問うのです。子どもは少し考えて「砂遊びが好きだから!」と自分のやりたいことを教えてくれます。
また、子どもが「なぜ?」「どうして?」と聞いてきた時は「何でだと思う?」「どうしてだと思う?」「どうしたらいいと思う?」と「質問返し」をしてみてください。安易に他者に答えを求めるのではなく、まず自分の頭で考える習慣を身につけることができます。
良好な親子関係を築き、親子の対話に「問い」を増やして、子どもに考えるきっかけを与える。すると、子どもは何事も自分で考えるようになります。地頭力の強い子どもは、多くの場合、家庭でのコミュニケーションによって当意即妙の発想力、思考力、言語力を獲得していきます。
家庭でソフトスキルを育てる最高の場が食卓です。食事中の楽しい雑談は、子どものコミュニケーション能力を高め、好奇心を刺激し、思考を深めてくれます。親の仕事の話、政治や経済の話、環境や社会問題など、学校では学ぶことのできないトピックが多いほど、子どもはたくさんの知識を吸収し、様々な事柄について「考える習慣」を身につけることができます。
オープンエンドの質問で考える力を鍛える
日本では「指示・命令」で子どもを動かそうとすることが多いですね。これを少し変えることで、子どもの「考える習慣」を育てることができます。
「宿題しなさい!」と命令するのではなく「今日学校で何を習ったのか教えてくれる?」と聞けば、子どもは一生懸命思考を働かせて、授業で勉強した内容を教えてくれます。
「YES・NO」で答えられる質問をクローズドエンド、「YES・NO」で答えられない質問、答えがない質問をオープンエンドと呼びます。たとえば「今日学校楽しかった?」という質問は「YES・NO」で答えられるのでクローズドエンドです。これでは話が「うん」「べつに」で終わってしまいます。
一方オープンエンドは、以下のような質問形式です。
・「今日先生の話の中で一番おもしろかったことを教えてもらえる?」
・「休み時間の一番楽しい過ごし方を教えてくれる?」
・「今日笑った話を教えてもらえる?」
・「クラスでユニークな子について教えてくれる?」
・「担任の先生はどんな人か教えてくれる?」
これらに答えるには、記憶を呼び起こし、それを言葉にして説明しなければなりません。つまり「深い思考」が要求されるのです。正解のない質問を多くすると、親子の会話が弾むようになり、対話を楽しみながら思考を深めていく訓練を家庭で実践できます。