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子どもの「自主性」を育てる親は、人生の哲学を伝えあとは子どもに任せる

2021年07月13日(火)20時50分
船津徹

人生の哲学を伝え、あとは子どもに任せる

アイビーリーグの名門、ペンシルバニア大学ウォートンスクールを首席で卒業したアディル君は、こう言います。

「両親は私が何をするにも私の意志を尊重してくれました。私が『何をすべきなのか』を示してくれましたが、『どうすべきなのか』は私に任されていたんです。

たとえば家族のルールとして「スポーツをすること」がありましたが、どのスポーツをするのかは私が選ぶことができました。私の選択について両親が反対したり、うまくいかなかった時に叱ることはなかったです。おかげで私はあるがままの自分に自信を持つことができました。

両親は「学問はどんな道を目指す上でも絶対に必要なものである」と、勉強の大切さについて教えてくれましたが、「勉強しなさい」と私に言ったことはありません。勉強をいつ、どこで、どれだけやるかは全て私に任されていました。でも放任していたわけではなく、勉強でわからないことがあればいつも両親が助けてくれました」

このアディル君のケースのように、優秀な子が育つ家庭では、親が子どもに「大枠の方針」や「人生の哲学」を伝えはしますが、「では具体的にどうするか」は子ども自身に選ばせます。そして、子どもがつまずいた時には手を差し伸べ、一緒に解決していくのです。

すると何が起きるかというと、子どもの「やる気」が伸びていきます。自分の選んだことが(親のサポートも手伝って)うまくいくという体験を積むことで、子どもの自尊感情が高まり、何事にも自分で目標を設定し、その目標を達成するための努力を惜しまなくなるのです。

親の干渉が強いと「指示待ち人間」になる

「あれをしなさい」「これをしなさい」「宿題やった」「教科書持った」と親が何においても口を出し、子どもの行動に先回りばかりしていると、自主性が育ちません。すると、以下のような悪循環に陥ってしまうのです。

・自分で考える習慣が身につかず、言われたことしかやらない(できない)
・やる気がなくなり、物事を上達させることに意識が向かなくなる
・人に指示されるのが嫌になり、親や大人の言うことを聞かなくなる
・挑戦しないので成功体験を積めず、自尊感情の低いまま大人になる
・何事も周囲に流されて決断するようになり、自己が確立されない

「言われたことをしっかりやる子」は、親にとっては「都合のいい子」に映ることもあります。また暗記が得意で、ペーパーテストではいい点数を取れることも多いのですが、問題が起きやすいのはティーンエイジャーを経て、社会に出ていく時です。

自分自身で考え、選択して物事を成し遂げてきたという自信がないので、周囲に合わせて(空気を読んで)自分の人生を選んでしまう、何かをやり切ることができず、何事も中途半端に終ってしまう、といったことが起こりやすくなります。

実際、こうした例は、特に学歴(テストの点数や偏差値)を重視する日本や韓国といったアジアの国でよく起きている問題です。

人生の目的を見つけられず転職を繰り返す、十分に自信が育っていないので、挫折を経験した時に立ち上がれなくなる、そんな若者が、実に増えています。

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