最新記事

ヘルス

感染症対策に有効というビタミンD、どれだけ取れば大丈夫?

2021年03月05日(金)13時35分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

スイスの精神分析家ブルーノ・リーネル博士によると、若者は「30分の日光浴で2万IUのビタミンD」が体内で生成されるという。

<感染症対策にも効果があると注目のビタミンD、果たしてどのくらい取るのがいいのか?>

約1年前、筆者は検査により自分のビタミンD不足を知った。ヨーロッパで新型コロナウイルス感染者が急増する直前で、ビタミンDで感染予防をと考えていたわけではないし、気分が落ち込んでいたわけでもない。健診のときに、近ごろ抜け毛があまりにも多くて気になると医師に伝えたら、ホルモンのバランスが崩れているかもしれないということで、ホルモン系の検査(採血)をしてくれたのだった。

チューリヒの検査ラボから届いた結果には、亜鉛とビタミンDが足りないとマークがついていた。ビタミンD値は、12.6ng/ml(ナノグラム/ミリリットル)。

ラボの指標は3段階で、「不足」にあてはまった。筆者は、指標はスイス内で一律だと思っていた。しかし、スイス政府の指標を見ると筆者の12.6ng/mlは「欠乏」に近い不足状態だった。また国内外でも統一されておらず、たとえば日本内分泌学会・日本骨代謝学会により発表された指針でも「欠乏」状態にあてはまった。

【血中ビタミンD(25-OHビタミンD)の充足度の指標例】
reuters__20210305131400.jpg
*『ビタミンDとケトン食 最強のがん治療』著の古川健司氏が院長を務める医院
 

筆者は医師の指示通り、ビタミンD液と亜鉛の錠剤を毎日摂取するようにした。3カ月後に再検査をしたら結果は26.8 ng/mlで充足状態まであと一歩。さらに取り続け、5カ月後の秋の検査で、やっと30.5 ng/mlになった。

8カ月の前後でとくに大きい変化は感じなかったものの、抜け毛は明らかに減ったように思う。ビタミンDと亜鉛サプリメントの効果があったのかもしれない。

50ng/mlは高過ぎる数値ではない

newsweek_20210305_132102.jpg
京都で研究・教授に携わっていた精神分析家のブルーノ・リーネル博士(撮影筆者)
 

時間はかかったが、筆者は充足の域に達してほっとしていた。ところが年末、以前取材したことのある精神分析家ブルーノ・リーネル博士から、「30ng/mlは新型コロナウイルスが重症化しない最低ラインです」とアドバイスをもらい驚いた。博士はビタミンにも精通している。筆者が充足値になかなか達しなかったのは、1日の摂取量が少なかったためだということも指摘した。

リーネル博士は、充足の値として50~90ng/mlを薦める。がんになるリスクを避けるためにも60ng/mlにしたほうがよいとのことだった。博士によると、50ng/mlは決して高過ぎる数値ではない。たとえば母乳育児をする母親が維持すべき最低ラインだという。

近年、母乳の落とし穴として、母乳に含まれるビタミンD量が少な過ぎることが乳児のビタミンD不足につながっていると報道されている。しかし、博士は「ビタミンDがもともと母乳に含まれにくい成分だからではなく(母乳より人工乳がよいわけではなく)、母親がビタミンD不足だから母乳のビタミンD量が少ないのです」と話す。母乳を与える母親たちのビタミンD濃度を調べた研究があり、D不足の乳児たちの母親はみな、50ng/mlに達していなかったという。

日米の1日の公式摂取目安量は低過ぎ?

リーネル博士によると、若者は「30分の日光浴で2万IUのビタミンD」が体内で生成される

ビタミンD不足の人が1日にどれくらい摂取すべきかには、目標値や体重が関係してくる。ネットで検索すると、ビタミン摂取量の自動計算を無料で提供している企業や団体がある。

たとえば、ビタミンDに関する情報を広めているアメリカの非営利組織GrassrootsHealthや、サプリメントやビタミンD検査キットを販売するドイツのnextvitalなどが提示する数値はそれぞれ異なる。より正しい見積もりには、現在の血中のビタミンD濃度が必要だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平案、ロシアは現実的なものなら検討=外

ワールド

ポーランドの新米基地、核の危険性高める=ロシア外務

ビジネス

英公的部門純借り入れ、10月は174億ポンド 予想

ワールド

印財閥アダニ、会長ら起訴で新たな危機 モディ政権に
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 5

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 3

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...…

  • 4

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 5

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること