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社会で活躍するための「健全な競争心」を育むヒント

2020年07月21日(火)16時35分
船津徹

競争文化を支えるジュニアスポーツリーグ

アメリカの競技スポーツを支えるのがジュニアリーグです。コミュニティーごとに、サッカー、野球、バスケットボール、テニスなど、多くのジュニアリーグが存在します。リーグというのは、3〜4ヶ月のシーズン中に、参加チーム同士が対戦を繰り返し、対戦結果を総合した成績によって最終順位を決定する総当たり戦のことです。

一発勝負のトーナメント戦(勝ち抜き戦)ですと、一回負けたらシーズン終了ですから、弱小チームは試合経験を積むことができません。また「勝つこと」に重点が置かれますから、チームのベストメンバーで挑むことが当たり前になり、技能が未熟な選手は試合に出ることができなくなってしまいます。

リーグ戦であれば全てのチームが同じ試合数をこなしますから、技能の低い選手でも試合に出ることができるのです。もちろん初心者であっても、リーグに参加すれば、シーズン中はほぼ毎週試合に参加することになり、たくさんの実践経験を積み重ねることができます。

ジュニアリーグは、年齢別、レベル別に分類されていますから子どもの技能に合った競争を楽しむことができます。まずは初心者リーグで場数を踏み、技能が向上してきたらワンステップ上のレベルへ参加させます。さらにそこをクリアしたらもうワンステップレベルを上げていきます。これを続けていると、いつの間にか、ずば抜けて高いレベルへ到達できるのがアメリカのジュニアリーグの優れた仕組みです。

ジュニアリーグの多くは3〜4ヶ月のシーズン制ですから、春、秋、冬とシーズンごとに異なるスポーツに参加することも可能です。小学生の間はいくつかの競技を経験させ、小学高学年〜中学から徐々に得意なスポーツに絞っていくというのがアメリカのスポーツペアレントの間では定番となっています。

親は勝敗にはこだわらないことが原則

競争には勝ち負けがあり、順位がつきます。一握りの勝者と多くの敗者が生まれます。子どもを競技スポーツに参加させる際に注意したいのが「親が勝敗に寛容であること」です。結果よりも、100%全力を尽くして努力したプロセスを評価してあげることが大切です。

子どもが試合で負けた時、親が「次にもっとがんばればよい」「もっと練習して次に勝てばよい」「どうしたら次は勝てるのか考えよう」という態度で接していれば、子どもは安心してチャレンジを継続することができます。
一方で親が「失敗は許されない」「やるからには勝たねばならない」と勝利へのこだわりが強すぎると、子どもに恐怖心や不安感を植えつけてしまい、実力を発揮できなかったり、競争を楽しめなくなったりします。

日本のジュニアスポーツには「絶対に負けられない!」という深刻な雰囲気がつきまといます。親やコーチが「勝つこと」を意識し過ぎると、子どものプレーが消極的になりがちです。負けないためはミスを減らすことが重要ですから、どうしても安全な試合運びへと流れてしまうのです。

いつもと違う方法を試してみたり、自分の特性を活かした大胆なプレーをしてみたり、子どもの競技スポーツの素晴らしさは、失敗を恐れず全力でぶつかることで得られる達成感や有能感を味わえることです。重要なのは「競争経験」であり「勝敗」ではないのです。

アメリカの親は子どもを試合に送り出す時に「楽しんできなさい!」と言葉をかけます。一定のルールの中で本気でぶつかり合う真剣勝負を思い切り楽しみなさい、というメッセージです。親が勝ち負けにこだわらなければ、子どもは緊張する場面でも自分のプレーを出し切ることができるようになります。

とは言っても試合で負けてばかりでは子どものやる気は育ちません。理想は手の届く範囲の競争に参加させることです。今の実力よりも少し高いレベル、勝ったり負けたりのきわどい勝負ほど子どもを大きく成長させます。明らかなレベル差がある場合、子どもに劣等感を持たせる可能性もあるので注意してください。

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