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かつて北欧も「育休が取りずらい国」だった 世の父親へ育児参加を勧めるこれだけの理由と秘策

2020年02月04日(火)17時45分
船津徹

ポイントは「誕生直後」の育児休暇

「父親の育児参加が重要!」ということは理解できても、ほとんどの男性は子育ての経験がありませんから、具体的に、いつ、どのように育児に関わったらいいのか分かりません。育児休暇を取っても、ただ休んでいるだけで何もしないというケースも少なくないようです。

コロンビア大学のジェーン・ワルトフォーゲル教授は、子どもが「誕生して間もない時期」に、ある程度まとまった育児休暇をとった父親は、その後もずっと子育てに関わる傾向が高いと報告しています。

カナダのケベック州が行った調査によって、子どもが生まれた「直後に」育児休暇を取った父親は、育休期間が終わっても、家事や子育てに協力的になることが分かっています。

父親は、子どもが生まれた「直後に」「ある程度まとまった期間」赤ちゃんと一緒の時間を過ごすことが大切です。オムツを替えたり、抱っこしたり、あやしたり、沐浴させたりすることで、我が子への愛着(アタッチメント)が強まり、父親が自発的に子育てに参加するようになるのです。

誕生直後の父親の育児参加は、母親にとっても大きな支えとなります。産後うつは多かれ少なかれ、出産後の全ての母親に起こる現象です。ホルモンバランスの急激な変化によって、精神が不安定になるからです。

産後の母親の精神不安を軽く考えてはいけません。母親が落ち込んでいたり、イライラしていると、子どもへの対応がどうしても冷たく、刺々しくなり、子育てにとって良い影響は何一つありません。

特に誕生から数週間は、授乳や抱っこなど、子どもと密接に関わる機会は母親が圧倒的に多く、母親の精神不安がそのまま子どもの人格形成に影響を与えるので深刻です。核家族化が進んだ今の社会で「よい子育て」をするには、パートナーである父親の協力が不可欠なのです。

【参考記事】「育休パタハラ」を生み出すのは日本企業の転勤制度

2歳までは母親が主役、父親は母親のサポート役

父親の役割は子どもの成長によって変わっていきます。まず子どもが心の土台(情緒や性格の方向性)を形成する2歳頃までは、子育ての主役は母親であり、父親は「母親のサポート役」です。買い物、掃除、炊事、食器洗い、ゴミ出し、オムツ交換、沐浴の手伝いなど、母親でなくてもできる家事や育児は父親ができるだけサポートしてあげてください。

父親の役割は、母親が穏やかな気持で子どもに向かい合えるように環境を整えてあげることです。家事や育児の雑用に加えて、母親のグチを聞いたり、母親に自由な時間を作ってあげたりすると、母親の精神が安定し、やさしくリラックスした気持で子どもに向かい合えるようになります。

子どもの身体がしっかりしてくる1歳半〜2歳頃からは、父親が直接子どもと関わる場面が増えていきます。お馬さんごっこ、おんぶ、肩車、相撲など、身体が密着する(やや荒っぽい)遊びをしたり、家の外で一緒に身体を動かしたり、魚取りや虫取りをしたり、いつもとは違う場所で、いつもとは違う人と、いつもとは違う遊びを経験させるのは、父親が適任者です。

子どもは父親との活発な遊びを通して、どこまでの乱暴が許されるのかを父親の表情や声の変化から読み取る力=社会性を身につけると言われています。一人っ子が増えた今は、兄弟姉妹がぶつかり合って社会性を学んでいくということが少なくなりましたから、尚更父親の役割が重要になっているのです。

子どもの社会性を育てるといっても難しく考えることはありません。父親は自分が好きな遊びやアクティビティを、子どもと一緒に楽しめばいいのです。父親との遊びを通して、自然に触れ合い、多様な人と関わる経験は、子どもの有能感を高め、自己肯定感を大きく育ててくれます。

【参考記事】北欧の働く母親も楽じゃない

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