実は効果は科学的に解明できていない──大麻よりやさしいCBDという熱狂
HIGH ON THE HYPE
ただし何が、どれだけ含まれているかを確認する方法がない。「フルスぺクトラムは意味のないマーケティング用語だ」と、薬学者のテーガンは言う。「メーカーが実際に成分を検査すること自体がまれで、結果を公表することはさらにまれだ」
「一部のメーカーは、およそ科学とは無縁な世界に生きている」と嘆くのは、シアトルの医師で医薬品研究者のカーレマイトレ・アリフだ。「品質管理や規制当局による監督という点で、CBD製品はチョコレート菓子並みの扱いを受けている」
複数の調査によれば、既存の業者が扱う商品の中にはCBD含有量がラべル表示と大きく異なるものがある。またTHCの残存量や汚染物質(重金属や殺虫剤)の混入量が法定限度を超えるものも見つかっている。特に、原材料が輸入品の場合は要注意だ。なおブルーバードやべリタス、ヘブンリーRxのようなメーカーは、厳しい品質管理と検査手順を設けていると主張し、製品の分析や認証は第三者機関に委託しているという。
ただし、含有成分が分かったとしても、その含有量が健康改善に役立つレべルかどうかを知る手だてはない。現時点でCBDの摂取量についての科学的な知見はないに等しい。
しかし科学者たちの知る限り、市販品で「適量」とされている摂取量はおそらく、健康状態の明確な改善に役立つ量よりもずっと少ない。例えばCBDの治療効果が認められている小児期てんかんの場合、法定の投与量は1日約500ミリグラムだ。ところが市販のCBDオイルは、成人向けでも適量は「数 滴」とされている。つまり、多めに見積もっても10ミリグラム程度だ。
ウィスコンシン医科大学神経科学研究所の所長でCBDの研究者でもあるセシリア・ヒラードは、市販のCBDオイルを大量に摂取することで神経痛などの症状が改善された人を何人も見ている。だが、そこには大きな疑問があると、彼女は言う。痛みを軽減してくれるのは、そうしたCBD製品の多くに含まれるTHCがもたらす「ハイな状態」である可能性が高いからだ。
THCを全く含まないCBD剤の臨床試験も実施されており、急性不安への一定の効果が認められている。ただし1回の投与量は300ミリグラム程度だから、市販品で言う「適量」の数十倍だ。それほど大量に服用すれば副作用が出る恐れもある。また今の値段では、途方もない金額になってしまう。
CBD成分をどうやって血流中に浸透させるかという方法論も、問題をさらに複雑にしている。煙や蒸気を吸い込む方法だと、摂取したCBD成分の約半分が数秒以内に血流に入り込むから効率的だが、たばこや電子たばこと同様の健康リスクを伴うかもしれない。
数滴のCBDオイルを舌下に垂らして、1分ほどかけて口内粘膜から吸収させる方法なら、数分後には成分の約20%が血流に入り込む。最も効率が悪いのは経口投与だ。胃の中でCBDが分解されるため、血流に入り込めるのはわずか10%程度だし、吸収されるまでに時間もかかる。
創生期の抗生物質と同程度
そのため多くの専門家や愛好家は舌下摂取が一番だと考えているが、CBDオイルの説明書にはこの方法が記載されていない。多くの消費者がその感触を好まないことや、ラべル表示に関してFDAの規制があることが理由だ。 規制が緩和されれば、舌下で溶けるシート状のCBDがヒットするだろうと、べリタスのアレクサンドル・サルカドCEOは予想する。