実は効果は科学的に解明できていない──大麻よりやさしいCBDという熱狂
HIGH ON THE HYPE
多くの研究者がCBDに関心を示す理由は何か。まず(ほとんどの薬剤に付きまとい、時には致命的になり得る)副作用が報告されていない。しかも実に広範囲な、かつ深刻な症状への適用が期待されているからだ。
CBD製品の大手ヘブンリーRxのポール・ノーマンCEOによれば、CBDオイル使用者の40%は毎日摂取している。コンシューマー・リポーツ誌による今年の調査では、CBD利用者の22%が処方薬の代替として使用していることも分かった。
当局の規制緩和もCBDブームの追い風になった。CBDの原料となる麻は大麻と違って、麻薬成分のテトラヒドロカンナビノール(THC)をごく微量しか含んでいない。しかし大麻の近種であるのは事実で、THCを除去した後の大麻からCBDを製造するケースもあるという。
だから以前は、CBDの所持や製造が当局による摘発・押収の対象となることもあったが、最近は減っている。その背景には世論の反発(有害という証拠のない物質をなぜ規制するのか)がある。また連邦レべルでも州レべルでもCBD合法化の流れがある。
昨年制定された農場法は、THC含有量を製品の乾燥重量の0・3%未満に保つといった基準を守る限り、麻の栽培・加工・販売を合法と認めている。「まだFDAの規制はあるが」と、CBD製造企業ブルーバードボタニカルズのブランドン・べイティCEOは言う。「もう麻薬取締局(DEA)に捕まる恐れはない」
消費者の期待と政府の規制緩和で、市場は盛り上がっている。ブルーバードの昨年の売り上げは前年の倍以上で、さらに今年も倍増を目指す。上場企業のべリタス・ファームズも、過去2年で売り上げが倍増。今年第1四半期は150万ドルを超え、前年同期のほぼ4倍だ。べリタスは全米950店舗で製品を販売しており、クローガーにも商品を供給することになっている。
CBDが化粧品などの主要消費財に使われるようになれば、ブームはさらに大きくなる。現在はチンキ剤(生薬の成分をエタノールで浸出した液剤)やカプセルが主流だが、CBD入りローションなどを肌に塗っている消費者もいる。
毎朝のコーヒーから食後のデザートまで、全てにCBDが含まれる。そんな時代が来るのかもしれない。「大手の食品・飲料会社やたばこ会社は、FDAがCBDを添加物として認可するのを待っている」と言うのは、ヘブンリーRx社株の45%を所有する投資家のブラディ・コブだ。「そうなったら各社がこぞって参入する」
成分の種類と量は確認できず
コカ・コーラやモルソン・クアーズ・ブリューイングなど飲料メーカーも、CBDを添加した製品の開発を計画している。ヘブンリーRxも将来的にCBD入り食品を発売するため、ソーダ水やプロテインバーの会社を買収した。「CBDはヨガの後の疲労回復にも役立つ」と同社のノーマンは言う。証明する科学的データはないが、そう信じる消費者は多いのだろう。
市販のCBD製品に含まれる成分を確認するのは困難だ。ほとんどのメーカーは「フルスぺクトラム」と称するCBD製品を提供している。つまり麻薬成分のTHCは含まないが、CBDに加えてカンナビノイドやテルぺン、フラボノイドなどの麻由来成分をミックスした製品だ。
消費者が魅力を感じるのは「アントラージュ効果」、つまり各種の成分が組み合わさることで個々の機能を超えた健康上の利点が得られるとする概念だ。これは科学的に実証されていないが、否定もされていない。