食品の日持ちをよくして飢餓問題に挑むロジャース
A Forever Strawberry
食品の日持ちをよくして飢餓問題の改善を目指すロジャーズ DANIEL GRIZELJーDIGITALVISION/GETTY IMAGES
<天然のコーティング剤を使って食品ロスを減らそうという取り組みを支える哲学とは>
世界では毎年、食用に栽培された農作物の約3分の1が無駄になっている。膨大な食品ロスを減らすことができれば、飢えの問題も改善に向かうはずだ。
ジェームズ・ロジャーズはこの問題に、ユニークな方法で取り組んでいる。彼が創業したアピール・サイエンシズ社は、天然の植物由来素材から食用のコーティング剤を開発した。食品の日持ちを2倍に延ばすことができ、作物の持続可能な栽培や品質の向上、食品ロスの削減につながると期待される。
本誌マヤ・ページとローレン・バレットが話を聞いた。
──あなたが目指すものは?
自然に反するのではなく、自然と連携する世界をつくることが当社の目標だ。新しい化学物質で新しい問題を生むのではな く、自然が何十億年も前から使っている素材を利用している。
──解決したい問題とは?
私たちは農作物の栽培に淡水使用量の70%と、年200万トン以上の殺虫剤を使っている。温室効果ガスの4分の1は農作物を作るために排出されたものだ。
それなのに、栽培された作物の3分の1から2分の1が無駄になっている。食品ロスを減らせば、作物の栽培量を増やさなくても2050年には地球上の全ての人々の食料を確保できる。
──アピール社の役割とは?
あらゆる動植物は、乾燥と酸化を防ぐための防護壁で守られている。ではなぜイチゴは数日しか日持ちせず、レモンは何週間も持つのか。その差は壁の素材ではなく、分子配列にある。
私たちは農作物から抽出した保護脂質でコーティング剤を作っている。これを可食部分に塗布すれば天然の保護壁が強化され、イチゴをレモンと同じくらい日持ちさせることができる。
──着想はどこから得た?
最初はほんの思い付きだったし、私は農作物について何も知らなかった。しかし、世界で大勢の人が飢えに苦しんでいることは知っていた。しかもそれが十分な量の作物を栽培できないためではなく、十分にある食料を適切に届けられないためであることも知っていた。
──過去の取り組みから学んだことは?
中世の修道士は、リンゴを日持ちさせるために蜜ろうに漬けていた。当社の商品はこのアイデアを進化させたものだ。中世の修道士がやっていたようなことを、今なら新しいツールを使って実現できるはずだ。