最新記事

ドイツ

外国人季節労働者不足で、ドイツの旬の味覚、白アスパラガスの危機

2019年05月28日(火)15時00分
河内秀子(ドイツ在住ライター)

whiteasparagus3-iStock-131906500-720.jpg

白アスパラガスの収穫作業 typo-graphics-iStock

ポーランドの児童手当と、ドイツの白アスパラガスの関係

北ドイツ放送のメディア、NDRでは「さようなら、白アスパラガス畑よ、収穫作業ヘルパーは来ないまま」と題した記事で、4500ヘクタールというドイツ最大の白アスパラ畑を有する北ドイツ、ニーダーザクセン州の状況をレポート。ポーランドを例に「これまでは季節労働に出なければならなかったが、自国での生活や経済状況が上向いている。ドイツの白アスパラガス農家にとっては問題だが、ポーランドの労働者の立場から見てみればいいニュースだ」としている。特に2016年からポーランドで児童手当が出ることになったことで、家族を置いてドイツの畑を耕す必要があるのかと考える人が増え、季節労働をやめるきっかけになったと分析する。

人手不足を受けてドイツの農家は2年前からやっと最低賃金の時給9.10ユーロを確約できるようになり、宿泊施設などの環境もかなり改善された。冷たい飲み物やフリーWi-Fiを提供する農家も多いという。

しかし、それでも労働力不足は深刻だ。価格競争の問題からこれ以上賃金値上げは難しいとし、ドイツ各地の白アスパラガス農家はEU外、例えばウクライナや白ロシアなどの季節労働者にも、労働市場を開くべきだと要求している。

南ドイツ、フランケン地方では、白アスパラガスの収穫、いちごやホップ摘みといった仕事に、難民を従事させているという報道もある。しかも今年は、使い捨てのビニールシートを大量に使う栽培法自体が環境に良くないのではないかという指摘もおこり、白アスパラガスをもてはやす風潮自体を問題視する流れも出てきているのだ。

甘くとろけるような白アスパラガスだが、その栽培の裏事情には苦いものが混じっているようだ。

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

気候変動災害時に債務支払い猶予、債権国などが取り組

ビジネス

フェラーリ、ガソリンエンジン搭載の新型クーペ「アマ

ワールド

ブラジル政府、議会の金融取引税引き上げ却下を不服と

ワールド

豪小売売上高、5月は前月比0.2%増と低調 追加利
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    メーガン妃からキャサリン妃への「同情発言」が話題…

  • 5

    2100年に人間の姿はこうなる? 3Dイメージが公開

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    遺体を堆肥化する「エコロジカル埋葬」 土葬も火葬…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    キャサリン妃の「結婚前からの大変身」が話題に...「…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 5

    メーガン・マークル、今度は「抱っこの仕方」に総ツ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプvsイラン

特集:トランプvsイラン

2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる