暴力、体と性、労働と経済......ドイツの100年を超える女性運動の歴史がオンライン公開
実はドイツではこれまでほかの欧州諸国と女性運動の歴史に関する資料館の事情が異なっていた。女性史博物館や中央資料館を作って一つの場所に資料を集中させることをあえて避け、そうした資料館を各地に点在させていたのだ。
これは女性たちがナチス台頭の歴史から学んだ、言論統制から逃れる知恵だったと、デジタルドイツ女性アーカイブ(DDF)を統括する、社会学者であり文書記録保管職員のザビーネ・バルケ代表は語っている。
始まりは1970年代にドイツ語圏の公共の図書館や資料館に、女性に関する資料が揃っているところがほとんどないことに気づいた利用者たちが、独自に資料を集め出したことだった。40もの図書館、資料館は協力し、「イー・デー・アー(i.d.a. Dachverband)」という運営団体を立ち上げ、こうした資料を一箇所にまとめることに尽力し、今回のデジタル化に踏み切った。
「素晴らしい資料を集めているだけでは足りない。このデジタルアーカイブの知名度を高め、多くの人々に資料を見てもらわないと意味がないですから」とバルケは語る。
歴史からパワーをもらう
ラジオ局、ドイチュラントラジオ・クルトゥーア(Deutschlandfunk kultur)のインタビューでは、バルケは「今もまだ社会は男性優位ではないでしょうか」と話している。
「子供の教科書を見ると、1919年からのワイマール共和国については詳しく書かれているのに、女性参政権についてはたった1行だけ。女性たちがこの権利を得るために、どれだけ戦わねばならなかったのか、今日にいたるまでほとんど教えられていないし、私たちも知らない。デジタルアーカイブでその歴史を見せ、もっと知りたいと思ってもらうことが私たちの使命なのです」
このデジタルアーカイブ、その資料の量や幅広さもさることながら、テーマの切り口の面白さなどもあって公開スタートから閲覧数は増え続け、順調に利用者が広がっている。
今後も引き続き、知られざる女性の歴史にスポットを当てた資料を追加アップしていくそうだ。ドイツ語圏の資料ということでドイツ語だけなのが残念だが、今後このプロジェクトの人気を受け、同様の動きが広まることもあるかもしれない。
左から、デジタルドイツ女性アーカイブ(DDF)代表ザビーネ・バルケ、ドイツ連邦家族・高齢者・女性・青少年大臣フランツィスカ・ギフェイ、他の運営代表メンバー2名 CC BY 4.0 Digitales Deutsches Frauenarchiv/Tanja Schnitzler