軍事ロボットはキュートに
軍の資金援助で研究開発が進んでいる「かわいい」生物型ロボットの可能性は
未来の仲間 生き物のようでつい応援したくなる小型ロボットRHex Kodlab/YouTube
1年前、物理学者のダニエル・ゴールドマンからビデオが送られてきた。砂をかき分けて進む骨格だけの模型を撮影したもので、タイトルは「世界初のカメの赤ちゃんロボット」。
ゴールドマンは、ジョージア・ウミガメセンターの協力でこのロボットを製作。目的は、ウミガメが前足を使って進むメカニズムを調べるためだった。
もっともこの研究には別の目的がある。開発資金の一部を出したのは、米陸軍研究所のマイクロ自律システム・技術(MAST)連合。世界初のカメの赤ちゃんロボットの子孫は、米軍で活躍するかもしれない。
MASTは08年以降、生物の動きを模倣した小型ロボットの開発研究に年間約700万ドルを投じている。例えばカリフォルニア大学バークレー校のロバート・フィアリング教授はその資金で、多足型の超小型ロボットを研究。尾を利用して急旋回できるテイルローチや、回転する3本の足で動き回る1STARなどがあり、大きさはどれも小さなネズミほどだ。
ペンシルベニア大学のビジャイ・クマル教授は、動物の集団行動を軍事ロボットに応用するプロジェクトに取り組んでいる。
軍隊が、愛らしいロボットに求める役割は何なのか。MASTのブレット・ピエカースキ局長によると、兵士の「仲間」だ。いずれは重さ100㌘ほどの手乗りサイズで、作業パンツのポケットに入れて持ち運びできるようになるだろう。
これまでは、兵士の仲間といえば犬だった。彼らは負傷兵を見つけ、偵察して急襲を未然に防ぎ、臭いで爆弾を発見してくれる。もしもその犬が投げられたボールを取りに行きながら、別の命令も受けることができたら? 見つけたボールの写真も送ってくれるとしたら?
もちろん未来の仲間は犬型ではなく、カメ、ヘビ、ゴキブリを合体させたような小型ロボットだろう(尻尾があるかもしれない)。生き物そっくりに砂や棒切れ、葉っぱ、石ころの間を上手に動き回る。その姿は間違いなくかわいい。