軍事ロボットはキュートに
とりわけ生物に似たロボットの愛らしさは、軍にとっては厄介でもある。今ある実用一辺倒のロボットでさえ愛情を集めているのだから。兵士はロボットに名誉勲章を与え、故障すると新品との交換ではなく修理を求め、葬儀さえ執り行うという。
コミュニケーションが取れ、しかも生物のような外見のロボットなら人間との結び付きは強くなる。マサチューセッツ工科大学(MIT)メディア研究所の研究員ケート・ダーリングはワークショップを開き、プレオという名前の恐竜のおもちゃと人間の関係を調べた。
■道具として見なすべき
例えば、プレオを痛めつけて「殺せ」と参加者に命令する。プレオは尻尾をつかんで持ち上げられると、恐怖の悲鳴を上げる。すると参加者のほとんどが、命令を実行できなかった。しかしダーリングは、軍事ロボットは「道具であり、道具として扱わなければならない」と言う。地雷原に送り込んだロボットが吹っ飛ばされるたび、兵士が傷ついていたら困るからだ。
道具だけど「けなげでかわいい奴」。そんなロボットが今後、軍事システムに組み込まれていくのは間違いない。
私たちは、軍の資金に支えられた世界に生きている。インターネットの基礎となった通信ネットワークARPANETも、米国防総省の高等研究計画局(ARPA)の資金で生まれた。ARPAは防衛先端技術研究計画局(DARPA)に発展し、ロボット開発に力を入れている。
ただし私が最終的に気になったのは軍の関与よりも、自分自身の感覚だ。この記事を書くために私は1週間、MASTの資金で開発中の6足型ロボット「RHex」のビデオを見続けた。後方宙返りをし、ボールを追い掛け、雪の中を動き回る姿から目を離せず、いずれこれが兵器になるという事実は頭からすっかり消えていた。
そう、キュートな動画や小ネタが氾濫する世の中では、「軍隊の影」は簡単に忘れられてしまうのだ。
© 2014, Slate
[2014年8月26日号掲載]