最新記事

米政治

オバマ政権を支える「帰国組」の底力

財務長官から大統領補佐官まで、オバマ側近や閣僚の多くは海外経験が豊富。かつては内向きだったアメリカ人だが、国際派が指導者の必須条件になりつつある

2009年4月24日(金)02時04分
ジェフリー・バーソレット(ワシントン支局長)、ダニエル・ストーン

国際派大統領であるオバマは、少年の頃インドネシアのジャカルタでも育った(インドネシア人の義父、母、妹と)
Reuters

 内政担当の大統領補佐官に就任するバレリー・ジャレットがバラク・オバマに初めて会ったのは91年のこと。シカゴのレストランで顔を合わせた2人は、すぐに打ち解けた。なかでも2人の距離をぐっと近づけたのは、お互い幼少期を外国で過ごしたことがわかったときだ。

 オバマは少年時代の4年間をインドネシアで過ごした。ジャレットはイランの古都シラーズで誕生。父親はアメリカ人医師で、シラーズ初の近代的病院の設立にかかわった。幼少期のジャレットはペルシャ語とフランス語、それに「ほんの少し英語」を話したという。

 香辛料の効いた子羊とコメ料理は今もジャレットの大好物。「サフランの香りがする家に行くと幸せな気分になる」と彼女は言う。

 オバマと初めて会ったとき、外国で暮らした経験が自分たちの世界観にどれほど大きな影響を与えたか語り合ったことを、ジャレットは今も覚えている。「多様な背景をもつ人々のなかで暮らしたことが大きなカギになった」

 ジャレットが6歳のとき一家はアメリカに帰国した。しかしその後もさまざまな国に旅行し、ヨーロッパや中東、アフリカ、中南米の人々と親交を深めた。「異なる考え方があることを認め、よりオープンな姿勢でとらえられるようになった」とジャレットは言う。

 これはオバマが最も信頼する側近たちに共通する考え方だ。彼らの多くは外国で暮らした経験があり、アメリカを外側から見ることで培った見識をもつ。

 国家安全保障問題担当の大統領補佐官に就任するジェームズ・ジョーンズ前NATO(北大西洋条約機構)欧州連合軍最高司令官は、少年時代のほとんどをフランスで過ごした。財務長官に内定しているニューヨーク連邦準備銀行のティモシー・ガイトナー総裁は、ジンバブエとインド、タイで育った。

 NASA(米航空宇宙局)長官候補に名前があがっているスコット・グレーション退役空軍大将は宣教師の家庭に育ち、少年時代をアフリカで過ごした。

パスポート保有率は22%

 オバマ自身も世界でアメリカが果たすべき役割を考えるうえでは、インドネシアでの年月と大学生時代のパキスタン旅行が大きく影響したと明かしている。

 「文化を理解しなければ、外交政策で優れた判断を下すのは非常にむずかしい」と、オバマは07年に遊説先のアイオワ州で語った。「外国で暮らしたり旅したおかげで、人々の考え方や社会の現実をもっと理解できるようになった」

 しかし世界では、アメリカ人に外国の文化や考え方に対する理解があるとは考えられていない。それもそのはず、アメリカ人のパスポート保有率は今も22%程度。西ヨーロッパ諸国の割合はもっと高く、イギリスでは71%に達する。

 とはいえ世界が小さくなるにつれ、外国で働いたり学んだりするアメリカ人は着実に増えている。06〜07年に外国で学んでいるアメリカ人は24万人を超え、10万人にも満たなかった10年前に比べると大幅に増えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 8
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中