「がんになって初めて、こんなに幸せ」 50代看護師は病を得て人生を切り開いた
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<2人に1人ががんになる時代。病気をきっかけに自分の人生をとらえ直し、前向きに生きていくきっかけを得た人もいる。緩和ケア医の四宮敏章氏が問う。本当に病気は悪であり不幸なものなのか>
人生100年時代、あまりにも長い人生において、私たちは病とともに生きていかなくてはならない。どんな人でも病は避けられず、たとえ一度克服しても、病を再び得て、病とともに死んでいく。
病気になるということは、気分がいいものではないが、それでも病気をきっかけに人生を見つめ直し、新たな道を切り開いていく人もいる。
病気になったからといって、人生が終わるわけではなく、始まりの機会にもなり得るのだと、奈良県立医科大学附属病院の緩和ケアセンター長、四宮敏章氏は話す。
緩和ケア医療の専門家である四宮氏が伝える、生きる道を考えるために、病気の正体を知ることの大切さ。
四宮氏の著書『また、あちらで会いましょう――人生最期の1週間を受け入れる方法』(かんき出版)から、一部を抜粋・再編集して掲載する(この記事は抜粋第2回)。
※抜粋第1回はこちら:知られざる「人が亡くなる直前のプロセス」を、3000人以上を看取ったホスピス医が教える
※抜粋第3回はこちら:がん患者や遺族の誰にでも起こり得る「記念日反応」とは何か
病気は人生の一部である
抜粋の第1回では、医学的な見地から、死に至るプロセスについて説明しました。私がたくさんの患者さんから教わった「死は、恐れるだけのものではない」というメッセージが少しでも伝わればうれしいです。
次にテーマにしたいのは、「病気」というものの正体です。
長い人生のなかで病気にならずに死を迎える人はほとんどいません。しかし、病気になってうれしい人はあまりいませんよね。大事な人が病気になると、本人以上につらく、苦しい気持ちになることもあるでしょう。
人は、死と向き合う前に、たいていは病気というつらい体験が待っています。なぜ私たちは病気になるのでしょうか。この章では、「人生における病の意味」について考えてみたいと思います。
はじめにみなさんにお聞きします。
「病気になるということは不幸なことでしょうか?」
病気になったと喜ぶ人などいないように、たいていの人にとって病気は悪いもの、不幸なことと思われているでしょう。
しかし、本当に病気は悪であり不幸なものなのでしょうか。
仏陀は、人間には「生老病死」という4つの苦痛があると説かれました。私たちは生まれてからさまざまな経験をします。貧しい家庭に生まれ、とても苦労をしなければいけない人もいるでしょう。恵まれた環境に生まれて育ち、大きな問題もなく過ごす人もいるでしょう。
しかし、どのような人でも、いずれ歳を取り、そして何らかの病気になり、死んでいきます。どんな人であっても、「生老病死」は平等にあり、その苦しみからは逃れられないのです。
私はたくさんの患者さんを診てきて、多くの人から「苦しみの声」を聞いてきました。