最新記事

医療

「がんになって初めて、こんなに幸せ」 50代看護師は病を得て人生を切り開いた

2022年12月23日(金)19時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
がんサバイバー

写真はイメージです FatCamera-iStock.

<2人に1人ががんになる時代。病気をきっかけに自分の人生をとらえ直し、前向きに生きていくきっかけを得た人もいる。緩和ケア医の四宮敏章氏が問う。本当に病気は悪であり不幸なものなのか>

人生100年時代、あまりにも長い人生において、私たちは病とともに生きていかなくてはならない。どんな人でも病は避けられず、たとえ一度克服しても、病を再び得て、病とともに死んでいく。

病気になるということは、気分がいいものではないが、それでも病気をきっかけに人生を見つめ直し、新たな道を切り開いていく人もいる。

病気になったからといって、人生が終わるわけではなく、始まりの機会にもなり得るのだと、奈良県立医科大学附属病院の緩和ケアセンター長、四宮敏章氏は話す。

緩和ケア医療の専門家である四宮氏が伝える、生きる道を考えるために、病気の正体を知ることの大切さ。

四宮氏の著書『また、あちらで会いましょう――人生最期の1週間を受け入れる方法』(かんき出版)から、一部を抜粋・再編集して掲載する(この記事は抜粋第2回)。

※抜粋第1回はこちら:知られざる「人が亡くなる直前のプロセス」を、3000人以上を看取ったホスピス医が教える
※抜粋第3回はこちら:がん患者や遺族の誰にでも起こり得る「記念日反応」とは何か

◇ ◇ ◇

病気は人生の一部である

抜粋の第1回では、医学的な見地から、死に至るプロセスについて説明しました。私がたくさんの患者さんから教わった「死は、恐れるだけのものではない」というメッセージが少しでも伝わればうれしいです。

動画で知る「亡くなる直前に現れる5つの兆候」

次にテーマにしたいのは、「病気」というものの正体です。

長い人生のなかで病気にならずに死を迎える人はほとんどいません。しかし、病気になってうれしい人はあまりいませんよね。大事な人が病気になると、本人以上につらく、苦しい気持ちになることもあるでしょう。

人は、死と向き合う前に、たいていは病気というつらい体験が待っています。なぜ私たちは病気になるのでしょうか。この章では、「人生における病の意味」について考えてみたいと思います。

はじめにみなさんにお聞きします。

「病気になるということは不幸なことでしょうか?」

病気になったと喜ぶ人などいないように、たいていの人にとって病気は悪いもの、不幸なことと思われているでしょう。

しかし、本当に病気は悪であり不幸なものなのでしょうか。

仏陀は、人間には「生老病死」という4つの苦痛があると説かれました。私たちは生まれてからさまざまな経験をします。貧しい家庭に生まれ、とても苦労をしなければいけない人もいるでしょう。恵まれた環境に生まれて育ち、大きな問題もなく過ごす人もいるでしょう。

しかし、どのような人でも、いずれ歳を取り、そして何らかの病気になり、死んでいきます。どんな人であっても、「生老病死」は平等にあり、その苦しみからは逃れられないのです。

私はたくさんの患者さんを診てきて、多くの人から「苦しみの声」を聞いてきました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中