水田は温暖化ガスの深刻な排出源、削減のためAWD型のコメ作りを
Changing Rice Farming
節水型稲作を採用しても収穫量は変わらないとされる(ベトナム・ハノイ郊外の水田) NGUYEN HUY KHAMーREUTERS
<田んぼはメタンを生成しやすく、そのメタンは「地球温暖化係数」がCO2の28倍も高い。ベトナムで導入された「節水型稲作」なら、農家の利益増まで期待できる>
青々とした水田や、芸術的なほど美しい棚田は、アジア諸国では食を超えた文化の一部になってきた。だが、その水田が、温暖化ガスの深刻な排出源になっている。
その温暖化ガスとは、メタンだ。
田んぼに水が張られて、酸素の少なくなった土壌はメタンが生成されやすくなる。そして大気中に排出されたメタンは、CO2より寿命は短いものの、地球温暖化係数(GWP)は28倍も高い。
折しも世界では、2030年までに20年比で世界のメタン排出量を30%削減する「グローバル・メタン・プレッジ」が発足したばかり。アメリカとEU主導で始まったこのイニシアチブには、日本を含む100カ国以上が参加する。
その背景には、メタンの排出量削減が地球の気温上昇を1.5度に抑える目標達成のカギになるという意識の高まりがある。
そして水田は、人為的なメタン排出の12%を占めるから、その削減は30%削減のカギになる。
方法はいくつかある。
例えば節水型稲作(AWD)は、田に水を常時張っておくのではなく、土壌の水分が一定以下に低下したときに水を張る「間断灌漑(かんがい)」だ。これを土壌に合った管理方法と組み合わせると、水田のメタン排出量は30~70%減らせるという。
それだけではない。AWDは水や化学肥料の使用量を減らす効果もあるから、農家にとってはコスト削減につながる。
実際ベトナムでは、AWDと適切な管理技術を採用したコメ農家の利益が、13%増えたという報告もある。
国際稲研究所(IRRI)などが最近実施したアセスメントによると、ベトナムのメコンデルタの稲作地域全体でAWDを採用すれば、CO2相当物を年間560万トン減らせることが分かった。これは乗用車290万台を削減するのに等しい数字だ。
しかし、アジアのコメ農家の多くは小規模自作農家で、先端農業技術の知識は乏しく、低炭素技術の採用に必要な資金もないことが多い。
そこで政策当局者や企業や投資家にいくつか提案をしたい。
まず、国の温暖化ガス排出削減目標に、水田から排出されるメタンを含めること。
パリ協定に提出された各国の削減目標で、メタンに言及した国は、ベトナムなどひと握りだった。コメを大量に消費する国が、もっとこの問題を認識する必要がある。