世界を変えるテクノロジー、「台風の制御」実現は遠い未来ではない【未来予報図02】
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<台風の目に氷をまいて勢力を弱めれば、風速を3m/s減少させるだけで1800億円もの経済損失を軽減できる。それだけでなく、台風エネルギーを電力に変えることも可能だ>
テクノロジーは驚くべきスピードで「進化」している。今も世界中の企業が、SFを思わせるような未来のテクノロジーを開発している。そうしたテクノロジーによって未来のビジネスがどう変わっていくかは、実はある程度「予測」できる。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)で人工衛星の開発に携わっていた齊田興哉氏は、多方面の最新テクノロジーに精通しており、テクノロジーの発展と、それによって起こるビジネスモデルの変化を知り、仕事やキャリアに生かしてほしいと話す。
ここでは、齊田氏の新刊『ビジネスモデルの未来予報図51』(CCCメディアハウス)から3回にわたって抜粋する。パワースーツから臓器チップ、空飛ぶタクシー、見たい夢を見る装置まで、51の最新テクノロジーとそれらの「ビジネスの未来予報」を分かりやすく解説した1冊だ。
抜粋の第2回は、台風をコントロールする技術について。
※第1回:2030~2040年には、犬・猫との双方向の会話が実現する【未来予報図01】
※第3回:開発が進む最新軍事テクノロジー「昆虫サイボーグ」【未来予報図03】
台風の目に氷をまけば、勢力が弱まる
将来的には、台風を制御できるようになるだろう。では、台風を制御するというのはどういうことなのか見ていこう。
毎年何度も、日本に上陸する台風。勢力によっては甚大な被害をもたらす。自然には太刀打ちできないと考えてきたのが、これまでの発想だが実は、海上で発生した台風の勢力を弱めたり、消滅させたり、進路を変更させたりできる取り組みがある。
一昔前に台風制御に関する実験がおこなわれ、成功している事例がある。1969年、米国の気象局は、ハリケーンの目の外側の雲に、ヨウ化銀(ヨウ化銀は、氷の結晶構造に似ているため、大気中に散布すると、大気中の水が結晶化し、それを種に雲が発生するため、人工雨を降らせるのに使われている。ヨウ化銀には毒性があるが、人工雨に使用されるのに人体に影響を与える量は使われていない)を飛行機でまき散らす実験をおこなった。
実験の結果、ハリケーンの最大風速が50m/sから35m/sになった。しかし、実験に適した熱帯低気圧の数が少なかったり、実験のせいでハリケーンの進路が急に変わってしまうのを懸念する意見があったり、各国の利害調整などに苦労したりして、これ以上進展しなかったというのが実情のようだ。
2021年、台風を制御して、勢力を弱めたり、発電したりできるテクノロジーを開発すべく、横浜国立大学に台風科学技術研究センターが設立された。台風を正確に観測する技術や、数値シミュレーションで正確に予測する技術、台風のエネルギーを電気に変える技術、これらのテクノロジーを社会実装する技術などを研究している。
今までできなかった台風の制御ができるようになった要因は、数値シミュレーションなどによる台風の「効果判定」技術が発展したことが挙げられる。