最新記事

仮想通貨

高利回りで人気の分散型金融「DeFi」、本当にリスクに見合う運用法なのか

2021年9月3日(金)20時13分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)

流動性リスク

DeFiプラットフォームは、相場暴落など危機的な状況にも耐えうる十分な流動性を担保する必要があります。流動性が高い状態は、投資家が金融商品をいつでも売り買いできる状態を指します。

逆に流動性が低い場合、相場暴落時に売りが殺到して大量の資金がDeFiプラットフォームからひきあげられたら、残された投資家はそこで自分の望む売買ができなくなります。このため、プラットフォーム側は、事前にしっかり担保をとったり資金引き出し額に上限を定めたりルールを定めます。

例えばコンパウンド(COMP)は、流動性が低い時、投資家によるプラットフォームへの流動性供給に対するレート(貸出レート)とユーザーによる資金の借入に対するレート(借入レート)を上昇させます。これによって、流動性供給をする投資家にはさらに流動するインセンティブが、借り入れをしているユーザーにとってすぐに借金を返済するインセンティブが発生します。

コンパウンドの貸出レート(青)、借入レート(赤)、流動性(灰色)

210921kr_de06.png

(出典:Kraken Intelligence)

以下のグラフは、流動性が低い時に、コンパウンドが貸出レートと借入レートを上げた結果、流動性が上昇したことを示しています。例えば、2019年8月6日〜8日、コンパウンドは76%以上も流動性が低下したため、貸出レートと借入レートをそれぞれ4%と2%上げました。その結果、流動性は17%以上も上昇しました。

コンパウンドの借入レート(青)、貸出レート(赤)流動性(灰色)の変化率

210921kr_de07.png

(出典:Kraken Intelligence)

2019年後半をみてみると、流動性が低下したのは3回ありました。その際、貸出レートと借入レートはそれぞれ0.6%〜3.3%、0.4%〜3.0%のレンジで上昇しました。もちろん一概には言えないものの、今後の流動性リスクを計算する上でこれらは参考になる数値であると考えています。

ガバナンス・リスク

DeFiとは、仲介業者なしでインターネット上に散らばった個人間でのみ成立する金融サービスです。とは言っても、最初から「分散型」ではありません。そこには創業者が存在し、中心となるグループが存在します。ここでは、DeFiプロジェクトが運営権を一部の主要メンバーからコミュニティー全体に移譲する際に発生するリスクについて考えます。

成熟したDeFiのプラットフォームでは、独自トークンの保有者がプラットフォームに関する重要事項を投票によって決定します。これは「オープンガバナンス」と呼ばれるモデルで、DeFiプラットフォーム間で若干の違いはあるものの、「分散型」の成長を目指すDeFiにとって欠かせない要素です。

例えばDeFiプラットフォームの一つであるメーカー(MKR)は、2019年12月20日、MKRトークンのコントロール権をメーカー財団からメーカーのガバナンスコミュニティーに移譲しました。メーカーの保有者に、メーカーの未来に関する決定権が移ったのです。MKRの価格は、この変更によって、3.09%上昇しました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米防衛企業20社などに制裁 台湾への武器売却

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ビジネス

タイ中銀、バーツの変動抑制へ「大規模介入」 資本流

ワールド

防衛省、川重を2カ月半指名停止 潜水艦エンジンで検
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中