高利回りで人気の分散型金融「DeFi」、本当にリスクに見合う運用法なのか
流動性リスク
DeFiプラットフォームは、相場暴落など危機的な状況にも耐えうる十分な流動性を担保する必要があります。流動性が高い状態は、投資家が金融商品をいつでも売り買いできる状態を指します。
逆に流動性が低い場合、相場暴落時に売りが殺到して大量の資金がDeFiプラットフォームからひきあげられたら、残された投資家はそこで自分の望む売買ができなくなります。このため、プラットフォーム側は、事前にしっかり担保をとったり資金引き出し額に上限を定めたりルールを定めます。
例えばコンパウンド(COMP)は、流動性が低い時、投資家によるプラットフォームへの流動性供給に対するレート(貸出レート)とユーザーによる資金の借入に対するレート(借入レート)を上昇させます。これによって、流動性供給をする投資家にはさらに流動するインセンティブが、借り入れをしているユーザーにとってすぐに借金を返済するインセンティブが発生します。
コンパウンドの貸出レート(青)、借入レート(赤)、流動性(灰色)
以下のグラフは、流動性が低い時に、コンパウンドが貸出レートと借入レートを上げた結果、流動性が上昇したことを示しています。例えば、2019年8月6日〜8日、コンパウンドは76%以上も流動性が低下したため、貸出レートと借入レートをそれぞれ4%と2%上げました。その結果、流動性は17%以上も上昇しました。
コンパウンドの借入レート(青)、貸出レート(赤)流動性(灰色)の変化率
2019年後半をみてみると、流動性が低下したのは3回ありました。その際、貸出レートと借入レートはそれぞれ0.6%〜3.3%、0.4%〜3.0%のレンジで上昇しました。もちろん一概には言えないものの、今後の流動性リスクを計算する上でこれらは参考になる数値であると考えています。
ガバナンス・リスク
DeFiとは、仲介業者なしでインターネット上に散らばった個人間でのみ成立する金融サービスです。とは言っても、最初から「分散型」ではありません。そこには創業者が存在し、中心となるグループが存在します。ここでは、DeFiプロジェクトが運営権を一部の主要メンバーからコミュニティー全体に移譲する際に発生するリスクについて考えます。
成熟したDeFiのプラットフォームでは、独自トークンの保有者がプラットフォームに関する重要事項を投票によって決定します。これは「オープンガバナンス」と呼ばれるモデルで、DeFiプラットフォーム間で若干の違いはあるものの、「分散型」の成長を目指すDeFiにとって欠かせない要素です。
例えばDeFiプラットフォームの一つであるメーカー(MKR)は、2019年12月20日、MKRトークンのコントロール権をメーカー財団からメーカーのガバナンスコミュニティーに移譲しました。メーカーの保有者に、メーカーの未来に関する決定権が移ったのです。MKRの価格は、この変更によって、3.09%上昇しました。