高利回りで人気の分散型金融「DeFi」、本当にリスクに見合う運用法なのか
ではどのようにそのようなリスクを測るのでしょうか?ビットコインとWBTCの価格の差異に注目することで、WBTCのリスクを分析ができるでしょう。
ビットコインに対するWBTCの価格プレミアム
ビットコインとWBTCの価格差は-1.9%〜6.9% と振れ幅がありますが、30日間の平均は0.24%です。このため、WBTCのリスク・プレミアムは0.24%と考えることができるでしょう。
先ほどと同様、著名DeFiレンディングであるコンパウンド(COMP)とアーヴェ(Aave)、FulcrumにWBTCを預けた場合の年利をみてみましょう。それぞれ、0.06%、0.19%、8.74%です。WBTCのリスク・プレミアムが0.24%であるため、Fulcrum以外はリスクがリターンを上回る計算になります。
スマートコントラクト・リスク
次に、DeFiサービス提供に必要なプラットフォームにはどんなリスクがあるのかみてみましょう。まずはDeFiに欠かせないスマートコントラクトの脆弱性を標的にする外部からの攻撃リスクです。
スマートコントラクトは、ブロックチェーン上であらかじめ決められた契約を自動的に実行するもので、仲介者のいないP2P(個人間)の取引が前提となっているDeFiにとっては必要不可欠な仕組みです。コードの設定ミスやバグといったスマートコントラクトの欠陥によって、DeFiに預けられた巨額の資金が流出する事件は後を絶ちません。
2020年にDeFiの脆弱性をついた攻撃によって喪失した資金は、約8600万ドルと言われています。これは当時のDeFi預け入れ資産147億ドルの約0.58%に相当します。伝統的な金融業界とは異なり、こうした脆弱性に対する保険制度は整備されていません。
カウンターパーティー・リスク
次は、取引相手としてのプラットフォーム側の信頼性について考えてみましょう。一つの方法は、二つ以上のプラットフォームで特定の仮想通貨の価格を比較することです。例えば、2016年8月にDDoS攻撃を受けた仮想通貨取引所ビットフィネックスと同時期のクラーケンにおけるビットコイン価格を比較してみましょう。
ビットフィネックス:DDoS攻撃時のトレーディング停止とビットコイン価格
トレード再開時のビットコイン価格比較 クラーケン(赤)とビットフィネックス(青)
2016年8月2日、DDoS攻撃によってビットフィネックスは1万2000BTCを盗まれました。ビットコイン価格は下落し、ビットフィネックスはトレーディングを2、3日停止しました。
ハッキング攻撃があった日、取引終了時にビットフィネックスとクラーケンのビットコイン価格には11.8%の違いがありました。その日一日を通してみますと、二つの取引所の価格差のレンジは0.6%〜28.4%。このパーセンテージは、不透明な時期におけるプラットフォームに対する信頼値を示しており、プラットフォームに対するリスク・プレミアムと考えられるでしょう。