最新記事

仮想通貨

高利回りで人気の分散型金融「DeFi」、本当にリスクに見合う運用法なのか

2021年9月3日(金)20時13分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)

仮想通貨の場合はどうでしょうか?ビットコインの供給量は、コードによって2100万枚と上限が予め決められています。インフレによる価値の減少など不透明要素がないため、ビットコインのリスク・フリー・レートはゼロであると考えることができるでしょう。

では、イーサリアムの場合はどうでしょうか。ビットコインと同様にリスク・フリー・レートはゼロであると考えられますが、クラーケンの研究チーム「クラーケン・インテリジェンス」は、発行上限のないイーサリアムのインフレ率をハードルレート(投資を行ううえで、最低限確保すべき利回り)と考えることができると想定します。

なぜならイーサリアムでは毎年の新規発行によってインフレが生じETHの購買力が低下するため、それを上回る利回りの確保が必要となるからです。

イーサリアムの年間発行額は1800万ETHで、2021年2月時点では約1億1400万ETHが市場に流通しています。市場の流通量は年々増える一方で年間発行額は変わりませんから、イーサリアムの希釈率(dilution rate)は低下します。

2021年2月時点では、4.3%の年間流通額の増加があり、そしてインフレ率は4.3%となります。この4.3%がイーサリアムのハードルレートと考えられます。

ここで、DeFiの一つであるレンディングについて考察してみましょう。DeFiレンディングは、特定の仮想通貨を資金として預けることで利息を獲得できるサービスであり、イーサリアムも取扱通貨の対象の一つです。

DeFiレンディングで有名なコンパウンド(COMP)とアーヴェ(Aave)、Fulcrumでイーサリアムを預けた場合の年利は、2021年2月時点でそれぞれ0.13%、0.05%、1.33%です。イーサリアムのハードルレートは4.3%と想定しましたから、それぞれ4.17%、4.25%、2.97%の通貨リスクが発生することになります。

現在ほとんどのDeFiプラットフォームはイーサリアム基盤で構築されていており、資金の貸し借りに使われるトークンはイーサリアムだったりイーサリアム規格のERC-20が大半です。その中で、「ラップド・トークン」と呼ばれるラップド・ビットコイン(WBTC)とレンBTC(REN)があります。

ラップド・トークンは他の仮想通貨の価値と連動する仮想通貨を指し、ラップド・ビットコイン(WBTC)とレンBTC(REN)は双方ともビットコインと一対一で連動していると主張しています。

先述の通り、ビットコインのリスク・フリー・レートはゼロです。ただ、例えばWBTCでは、「カストディアン」と呼ばれる人々がビットコインを保有し、WBTCをミント(ブロックチェーンの一部として記録)します。

次に、「マーチャント」と呼ばれる人々が、ビットコインをカストディアンに預けたり、WBTCをバーン(焼却)してビットコインを取り戻す役割を担っています。

複雑なことを書きましたが、要するにWBTCという仮想通貨が成立するにはカストディアンとマーチャントが必要であり、彼ら自身がWBTCという仮想通貨自体のリスク要因になり得るということです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中