集団免疫の難しさと、変異株より大きな脅威「免疫消失の可能性」
REACHING HERD IMMUNITY
専門家はイスラエルを注視
問題の1つは、ワクチンが感染防止にどれだけ効果があるのかが、まだ不透明なことだ。
データは徐々に集まっている。イスラエルで2月に行われた研究(学術誌の査読を経ていない)では、ファイザー社のワクチンを接種した後の感染状態を検証した。
すると接種から12~28日後に発症した感染者の体内にあるウイルス量は、未接種の感染者に比べて4分の1に減っていたことが分かった。ワクチン接種が感染力の低下につながることを示唆する結果だと、研究チームは考えている。
ハーバード大学公衆衛生大学院が2月に実施した別の研究(こちらも査読前の論文)は、ワクチン接種が新型コロナの感染を予防する証拠は「ほとんどない」と指摘。
だがモデルナのデータによれば、同社製のワクチンには感染率を少なくとも61%低減させる効果が期待できるという。
ドレークは「ワクチンがどれだけの防御免疫をもたらすかはまだ不明だが、感染と相関関係がある重症化を減らす効果があることは分かっている」と指摘。「だからワクチンに感染を完全に防ぐ効果がないとしても、減らす効果はあるはずだ」と期待を示す。
統計会社スタティスタの調査によれば、現段階で最も包括的にワクチン接種を展開しているのはイスラエルだ。
科学者は、ワクチンの効果を示すデータをさらに収集しようとしている。そのためにはワクチン接種率の高い国に注目してデータを検証し、ワクチンにどれだけ感染や重症化、死を防ぐ可能性があるのかを、さらに詳しく調べる構えだ。
それによって、集団免疫を獲得できる時期をより正確に予測できるようになるかもしれない。
「科学者たちは新たな変異株を含めて、ワクチンにどれだけ感染予防の効果があるのかを、できる限り詳しく知ろうと奔走している」と、マイヤーズは言う。
「その過程では、イスラエルのように多くの人々がワクチン接種を終えている国のデータが極めて重要になる」
「イスラエルには誰もが注目している。集団レベルでワクチン接種を実施した初のケースだからだ」とダウドは言い、さらに付け加えた。
「これまでのところ、早期にワクチン接種を受けた集団では、新規の感染者が速いペースで減っている。現実に入院や死亡を減らす上でワクチンにどれだけ効果があるかを見極めるには、まだ時間がかかるだろう。ただし今までのデータを見る限り、ワクチンには期待が持てそうだ」
集団免疫をめぐる科学者の闘いは、まだしばらく続く。
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