最新記事

新型コロナウイルス

集団免疫の難しさと、変異株より大きな脅威「免疫消失の可能性」

REACHING HERD IMMUNITY

2021年4月20日(火)16時40分
エド・ブラウン

専門家はイスラエルを注視

問題の1つは、ワクチンが感染防止にどれだけ効果があるのかが、まだ不透明なことだ。

データは徐々に集まっている。イスラエルで2月に行われた研究(学術誌の査読を経ていない)では、ファイザー社のワクチンを接種した後の感染状態を検証した。

すると接種から12~28日後に発症した感染者の体内にあるウイルス量は、未接種の感染者に比べて4分の1に減っていたことが分かった。ワクチン接種が感染力の低下につながることを示唆する結果だと、研究チームは考えている。

ハーバード大学公衆衛生大学院が2月に実施した別の研究(こちらも査読前の論文)は、ワクチン接種が新型コロナの感染を予防する証拠は「ほとんどない」と指摘。

だがモデルナのデータによれば、同社製のワクチンには感染率を少なくとも61%低減させる効果が期待できるという。

ドレークは「ワクチンがどれだけの防御免疫をもたらすかはまだ不明だが、感染と相関関係がある重症化を減らす効果があることは分かっている」と指摘。「だからワクチンに感染を完全に防ぐ効果がないとしても、減らす効果はあるはずだ」と期待を示す。

統計会社スタティスタの調査によれば、現段階で最も包括的にワクチン接種を展開しているのはイスラエルだ。

科学者は、ワクチンの効果を示すデータをさらに収集しようとしている。そのためにはワクチン接種率の高い国に注目してデータを検証し、ワクチンにどれだけ感染や重症化、死を防ぐ可能性があるのかを、さらに詳しく調べる構えだ。

それによって、集団免疫を獲得できる時期をより正確に予測できるようになるかもしれない。

「科学者たちは新たな変異株を含めて、ワクチンにどれだけ感染予防の効果があるのかを、できる限り詳しく知ろうと奔走している」と、マイヤーズは言う。

「その過程では、イスラエルのように多くの人々がワクチン接種を終えている国のデータが極めて重要になる」

「イスラエルには誰もが注目している。集団レベルでワクチン接種を実施した初のケースだからだ」とダウドは言い、さらに付け加えた。

「これまでのところ、早期にワクチン接種を受けた集団では、新規の感染者が速いペースで減っている。現実に入院や死亡を減らす上でワクチンにどれだけ効果があるかを見極めるには、まだ時間がかかるだろう。ただし今までのデータを見る限り、ワクチンには期待が持てそうだ」

集団免疫をめぐる科学者の闘いは、まだしばらく続く。

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中