最新記事

教育

STEM教育を単に「理系人材育成」と考えたら大間違いだ

2019年1月23日(水)16時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

中村氏は、その「広くて深い思考ができること」こそが、AI時代に高めるべき能力ではないかと説く。他人よりも広く深く考えられるから、誰も思いつかないような創造性を発揮でき、どんな難題にも立ち向かえる問題解決力につながる。だから、容易にAIに取って代わられるようなこともない。

では、どうすれば「広くて深い思考」を子供たちに身につけさせることができるのか。その第一歩は、子供たちの「自由」を取り戻すことだ。

自由とは「自分の考えを持つこと」

近年、企業でも「新入社員はすぐにマニュアルを求めてくる」と嘆かれているように、「自由に」「好きなように」と言われると、途端に何もできなくなってしまう人が増えている。それは、本来自由な発想に満ち溢れているはずの子供たちでも同じだ。

学校や塾、受験では、どうしても「正解」を求められる。さらに親が教育熱心であれば、正解すれば褒められるし親も喜んでくれるが、間違えば叱られるか落胆させてしまう。だから子供たちは「正解」だけを求めるようになる。他人に評価されることが「良い」と思ってしまうのだ。

だが、社会に出て自分らしく活躍できる人材になるには、そして、AI時代に輝きを持って生き抜いていくには、「自分で考える力」が欠かせない。それは言い換えれば、「自由に考えられるかどうか」だ。自由とは「自分の考えを持つこと」なのだ。

STEMの4分野は「ものの仕組み」を知る学問だが、ただ原理や法則を暗記するのではない。それらが生活の中でどのように活かされているか、さらに自分自身がどう活用できるのかを、実感を持って知ることが大切だ。それが学ぶ楽しさにつながり、自由に、自分の頭で考える力となり、AIが苦手とする「感性」と「直観力」をも養っていく。

例えば「ステモン」では、歯車の原理を利用して「遊園地にあるような乗り物をつくろう」という取り組みをする際、最初の10分で基本原理を学び、次の40分でその原理をもとに制作し、最後の10分で実際に試して動かすという。その際、簡単な手順は教えるが、組み立て説明書はなく、何を作っても自由だ。

こうしたSTEM教育が有効である理由は、中村氏によれば4点に集約される。①コンピュータを活用する力を育むことができる、②教科横断の知識を応用しやすい、③子供が試行錯誤しやすい、④オープンエンドの課題設定(自分なりの答えを出す)、だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を

ビジネス

中国の安踏体育と李寧、プーマ買収検討 合意困難か=

ビジネス

ユーロ圏10月銀行融資、企業向けは伸び横ばい 家計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 8
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中