最新記事

技術革新

【間違いだらけのAI論】AIはなぜ経済成長をもたらしていないのか?

AI BENEFITS STILL TO COME

2018年12月11日(火)20時05分
エドゥアルド・カンパネラ(スペインIE大学フェロー)

成長の伸びが遅いのは驚くことではない。汎用技術の真の可能性がはっきりするまでには時間がかかり、企業がそれを製品化するにはさらに時間がかかるからだ。つまり、AIが急成長している時期に生産性が停滞していることには何の不思議もない。

無形資産投資は多いのだが

ともあれ、AI関連ビジネスの加速は喜ばしいことだ。アメリカでベンチャーキャピタルを取り込んでAIシステムを開発している民間企業の数は、2000年の14倍に達している。AIによる工業用ロボットも急増中だ。2003年から2010年にかけて、世界の工業用ロボットの数はほぼ変わらなかったが、2010~2014年には2倍近くに増加。2020年までには2014年の約3倍になると予想される。

しかし多くのAIプロジェクトは、依然として研究開発の段階にある。つまりソフトウエアやデータベース、デザイン、エンジニアの訓練といった無形資産への投資は多くても、経済統計の数字に結び付く具体的な製品への投資は少ないということだ。

昔ながらの自動車業界を見ても、無形資産投資が増えているのが分かる。自動車に搭載されるソフトウエアの価値が完成車の価値に占める割合は、2000年段階で7%だったが、2010年には10%に達した。この比率は、2030年には30%まで上がると考えられている。

国の統計部門は、国民経済計算の算出法をより現実に即したものにしようと努力している。しかし、よほど革新的な方法が採用されない限り、新たな汎用技術の普及による経済効果をGDPに反映させるのは難しいだろう。

AI分野における期待が大きいからこそ、現実との乖離が目立つのかもしれない。OECD(経済協力開発機構)はこう報告している。グローバルな最先端分野で開発される新しいテクノロジーはこれまでにないスピードで世界に広まっているが、既存の経済において多くの企業が取り入れるようになるにはまだ時間がかかる、と。

中小企業の多くは今も、第3次産業革命であるIT革命の成果を使いこなすのに悪戦苦闘している。AIを取り入れるのはまだまだ先の話だ。

しかもAI導入のプロセスでは経済的な損失が生じる。デジタル資産とそれを使いこなすスキルの習得に多くの資金と時間をつぎ込む必要があるからだ。また移行期には在来の製造工程も維持する必要があるから、その間は二重のコストがかかる。自動運転車がいい例だ。消費者の手に届くのはかなり先だが、企業は既に莫大な資金と人材と時間を費やしている。

しかし、今は我慢の時だ。過去の技術革新の歴史が参考になるとすれば、いずれはAI投資も報われる。ただし、それは2030年以後のことになりそうだ。そこまで耐える知力と体力が勝敗を分ける。

From Foreign Policy Magazine

<2018年12月18日号掲載>

※12月18日号(12月11日発売)「間違いだらけのAI論」特集はこちらからお買い求めになれます。

ニューズウィーク日本版 教養としてのミュージカル入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月17号(3月10日発売)は「教養としてのミュージカル入門」特集。社会と時代を鮮烈に描き出すポリティカルな作品の魅力[PLUS]山崎育三郎ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パウエルFRB議長巡る召喚状、地裁が差し止め 司法

ワールド

焦点:雪解けは本物か、手綱握りなおす中国とロシア向

ワールド

米、イラン新指導者モジタバ師ら巡る情報提供に最大1

ワールド

トランプ氏、イラン濃縮ウランのロシア移送案拒否 プ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 7
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 10
    謎すぎる...戦争嫌いのMAGAがなぜイラン攻撃を支持す…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中