2045年までに化石燃料全廃 カリフォルニア州知事への称賛と批判
CLIMATE LESSONS FROM CALIFORNIA
果たしてカリフォルニアは世界中の人を動かして、アメリカを反対の方向に引っ張るトランプ政権と共和党主導の連邦議会に対抗できるだろうか。自治体の指導者は十分な仕事をしているのか、それともまだ不十分なのか。人類の長期的な生存よりも目先の利益を優先する石油産業などの「気候破壊型産業」にはどう対処すべきなのか。
問題は山積している。そして残念ながら、現状ではブラウンも彼を批判する活動家もどちらも正しいと言えそうだ。対策の最も進んでいる地域でさえ、温暖化を食い止める水準には達していない。過去30年間、世界各国は本格的な対策を怠ってきた。そのため「2度未満」の目標を達成するためには、およそ政治的には不可能なほどのスピードで温暖化ガスの排出量を削減しなければならない。
SB350を法制化したカリフォルニアの場合、今後は再生可能エネルギーによる発電を増やしつつ、輸送部門の燃料をガソリンから電気に切り替えていくことになる。「電気自動車の充電ステーションは、30年までに現在のガソリンスタンド並みに普及する」と、SB350を起草したケビン・デレオン州上院議員は言う。
カリフォルニアは経済成長を達成しつつ、温暖化ガスの排出量を減らしてきた。デレオンに言わせれば、SB350の求める省エネ対策によって、断熱材の取り付けや古い家電製品の交換などで何十万もの雇用が創出されるはずだ。
とはいえ、道は険しい。ブラウンは15年の知事命令で、温暖化ガスの排出量を30年までに90年比で40%削減する目標を課している。「私たちは正しい方向に向かっている。しかし荷が重いのも事実だ」と言うのは知事側近のケン・アレックスだ。それでも世界中の人にカリフォルニアの取り組みを見てもらえば、「みんながもっと志を高くする必要があること、そして思った以上のことを実現できること」に気付いてもらえると、アレックスは言う。
環境問題をめぐっては、ブラウンのように進歩的で積極的な政治家にも鋭い批判が浴びせられるのが常だ。地球規模の大惨事を食い止めるには温暖化ガスの排出量を短期間で、大幅に削減しなければならない。そういう科学的真実を根拠に、環境保護派は対策の強化を訴える。
これに対して体制側が突き付けるのは政治と経済の現実だ。なるほど環境破壊につながるかもしれないが、今の社会は化石燃料に強く依存しており、これを性急に変えようとすれば激しい摩擦が生じるのは必至だ。