2045年までに化石燃料全廃 カリフォルニア州知事への称賛と批判
CLIMATE LESSONS FROM CALIFORNIA
アル・ゴア元副大統領(右)と『不都合な真実2:放置された地球』の試写会に出席するブラウン MARIO ANZUONI-REUTERS
<パリ協定離脱を表明したトランプに代わって、カリフォルニア州知事が気候変動対策を主導。グローバル気候行動サミットを開催中の同州では、知事と石油業界の攻防戦が行われていた。本誌9/11発売号「温暖化を加速させるホットハウス現象」特集より>
※本誌9/18号(9/11発売)は「温暖化を加速させるホットハウス現象」特集。驚異的な暑さと異常気象が世界を襲うなか、温暖化対策の前提や道筋が大きく揺らいでいる。目指すべき新たな道を見いだすカギは?
パリで3年前に開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、米カリフォルニア州知事のジェリー・ブラウンは国家元首並みの注目を浴びた。気候変動との戦いに取り組む「自治体の力」を強烈にアピールしたからだ。
何しろ当時のカリフォルニアの経済規模は、並みいる先進諸国を抑えて世界第6位。その指導者としてブラウンは世界中の自治体に呼び掛け、「2度未満連合」を立ち上げた。今世紀末までの気温上昇を産業革命以前に比べて2度未満に抑えることを目標とするもので、123の自治体の賛同を得た。その後、各国政府も連合の熱意に応える形でパリ協定を採択した。
そのブラウンが、トランプ政権の妨害をはねのけて「2度未満」の目標達成に邁進すべく、9月12〜14日までサンフランシスコでグローバル気候行動サミット(GCAS)を開催する。アメリカを除く世界の主要な温室効果ガス排出国のほとんどから、知事や市長、政策専門家、ジャーナリストらが出席する。
「これは1つのステップにすぎない」。今年7月、州都サクラメントの知事執務室でブラウンはそう語った。屋外の温度は40度に迫り、空気は乾き、130キロほど北では記録的な規模の山火事が発生しようとしていた。「これで十分だろうか? 否。これで私たちは大惨事を避けられるか? 否。それでも私はできる限りのことをしたい」
GCASの開催はドナルド・トランプが大統領になる前から決まっていた。COP21の席で「クリスティアーナ・フィゲレス事務局長に請われて、よし、私がやると答えた」そうだ。
フィゲレスは、18年にカリフォルニアで注目度の高いイベントを開催し、20年にパリで開かれるCOPに向けての勢いを加速させることを望んでいた。20年のCOPでは各国が、2度を「十分に下回る」目標を達成するための改革を具体化する「行動計画」を発表することになっている。
カリフォルニア州の気候変動対策における成功は他に類を見ないものだから、GCASの開催地にふさわしい。フィゲレスはそう考えていた。
州の成功で世界を牽引
カリフォルニア州は既に、温暖化ガス排出量を1990年レベルにまで下げる方向で動いているが、15年にブラウンはさらにその先を行く法案SB350に署名している。2030年までに州内の建物のエネルギー効率を2倍に高め、電力の半分を再生可能エネルギーで賄うと定めた法案だ。
一方で、ブラウンの取り組みは不十分で、石油産業に甘いと批判する活動家もいる。化石燃料の使用禁止を求める請願運動「ブラウンのラストチャンス」によれば、ブラウンは過去7年間にエネルギー産業の利益団体から900万ドル以上の政治献金を受け取り、2万件の新たな油井掘削を許可している(現実主義者のブラウンは「今すぐカリフォルニアで石油の使用を禁じたら、どうなると思う?」と反論している)。