最新記事
建築

サステナブル建築を先導する世界の最先端モデルとは

Going Ultra-Sustainable

2023年10月13日(金)19時50分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)

ドイツのボーフムでは、1930年代に建てられた集合住宅12戸に太陽光パネルが設置された。1平方フィート(約0・09平方メートル)当たり45キロワット時の電力を供給し、余剰分は地元の送電網に売り戻す。

やはりエネルギーを収集する技術として急速に進歩しているのがヒートポンプだ。ヒートポンプは空気や土壌、水などの熱を取り込んで循環させるシステムで、熱媒体を圧縮・膨張させることによって温度を上昇もしくは降下させ、熱を移動させる。

ヒートポンプの動力は、天然ガスを燃焼するのではなく送電網からの電力を使うので、排出ガスを削減でき、従来の電気暖房に比べて効率は4倍高い。最新のタイプは新しい種類の熱媒体と強力な圧縮機を採用し、寒冷地など氷点下でも機能するようになった。

昨年完成した米ボストン大学のコンピューティング・データサイエンス学部の新校舎は19階建てで高さ約90メートル、広さ約3万2000平方メートル。地元の厳しい冬を乗り切るために、全面的にヒートポンプを採用している。

超サステナブル建築において、エネルギーを生産することは「2番目の段階」だと、ZGFのバーグは言う。「最初のステップは、建物が必要とするエネルギーの量そのものを減らすことだ」

熱の出入りを防ぐ最新の断熱材や効率的なLED照明の導入は、近年の新築の建物では当たり前になった。多くの既存の建物にも後から設置されている。

設計段階で日照や通風を管理する機能を組み入れ、エネルギー需要をさらに減らすこともできる。ZGFが手がけたカリフォルニア州大気資源委員会の新しい本部ビルは、巨大な天窓から入る太陽光を電動シェードで調整し、ファンが涼しいエリアから暖かいエリアへと空気を移動させ、快適な室温を維持する。自然の換気システムとして偏西風を取り込むビルも登場していると、バーグは言う。

カルチャー
手塚治虫「火の鳥」展 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中