最新記事
健康

正義感の源は「はらわた」にあり!?... 腸内細菌が人の道徳的判断にまで影響を与える驚きの研究結果

Microbes and Morality

2024年6月6日(木)16時49分
パンドラ・デワン(科学担当)
正義は「はらわた」にあり... 腸内細菌は人の道徳的判断にまで影響を与える!?

T.L. FURRER/SHUTTERSTOCK

<仏独の共同チームによる最新研究によれば、サプリを飲んで腸内環境を整えるだけで、不公平を許さない正義感の強い人格になれる(かも)>

人体には膨大な数の細菌が生息しているが、その大部分は腸内に存在する。この腸内細菌は、代謝から感情まで心身にさまざまな影響を与えることが分かっているが、新たな研究では、意思決定にも影響を与える可能性が示唆されている。

しかも公平性を重視するといった、規範的な判断に影響を与えるという。

米国科学アカデミー紀要(PNAS)の姉妹誌PNASネクサスに発表された論文によると、この研究に取り組んだのは、フランスのパリ脳研究所(ICM)とドイツのボン大学の共同チームだ。

彼らは101人の被験者を2つに分け、一方には7週間にわたり腸内環境を改善する栄養補助食品(サプリメント)を摂取してもらった。

プロバイオティクス(いわゆる善玉菌)やプレバイオティクス(腸内の有用な細菌を増やす成分)などだ。もう一方のグループ(対照群)には、プラセボ(偽薬)が与えられた。

2カ月足らずで大変身

被験者は実験の前後に血液と便のサンプルを提出するとともに、行動経済学でよく使われる最後通牒ゲームをした。

これは2人のプレーヤー(AとB)が報酬を分け合うゲームで、まず、AがBに分け前を提案する。ぴったり50%ずつでもいいし、そうでなくてもいい。その金額が不満なら、Bは受け取りを拒否できるが、その場合2人とも報酬はゼロになる。

つまりBはいくばくかの報酬を得るよりも、受け取りを拒否することで、Aの不公正な行動を罰することを選んだことになる。心理学者が「利他的な罰」と呼ぶ行動だ。このためこのゲームは、被験者がどのくらい公正さを重視するかを調べるとき使われる。

腸内環境を改善するサプリを7週間摂取した被験者は、実験開始前と比べて、不公正な分け前の受け取りを拒否する可能性が大幅に上昇した。

この傾向は、Aとの取り分の差がごくわずかの場合でも見られた。これに対して、サプリを摂取しなかった対照群の選択は、実験開始前の選択とほぼ変わらなかった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 3
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 4
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 4
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中