最新記事
健康

医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

2024年4月23日(火)12時04分
川口 美喜子(医学博士 大妻女子大学家政学部教授 管理栄養士) *PRESIDENT Onlineからの転載

【食欲が落ちる年齢こそ「偏食」になりやすい】

「おばけ」と言うのは、筋肉などさまざまな体の構成成分となるタンパク質が、そうはならずにエネルギー源として使われてしまうことを、理解しやすいようにこうお伝えしています。

体の構成成分になるべきタンパク質がエネルギー源として使われてしまうと、体の骨格や筋肉にも影響してしまいます。

先の彼女は、体の構成成分になるタンパク質を多くとるのが目的だったはずなのに、糖質が足りていないがゆえに、タンパク質が用をなしていなかったのです。

これは、彼女だけの話ではありません。いま、多くの人が、筋肉を維持するため、免疫力を高めるために、「タンパク質を食べなければ!」と思い、せっせと食べています。

しかしその結果、食生活が偏ると、タンパク質は思うような栄養になりません。とくに痩せ型の人の場合、タンパク質を削ってエネルギー生産することになります。

高齢期に入り、全体的に食べる量が減ったり、消化や吸収する能力が低下していたりする場合にも、偏食が思いもよらぬ悪影響を及ぼすことは多いです。

【ごはんやパンは普通に食べていい】

「ね、だからごはんを食べよう! タンパク質はたまごでも、豆腐でも、お刺身でも、1品でいいから、ごはんを食べよう。○○さん夫妻なら、低脂肪にこだわることはないし、極端に脂質を増やす必要もない。

とにかく、ごはんやパンを普通に食べて、毎日の食事がもっとおいしくなるように変えてみましょう」

私がそう説明すると、彼女は目に涙を浮かべて「ごはんとお刺身、一緒に食べたらおいしいですよね。ごはんを食べたかったです」と言い、うれしそうに微笑みました。

食生活を改めれば、おおむね3カ月でコンディションは変わっていきます。

実は、医療や介護の現場でも、同様の問題が起きていることがあります。

あるとき、大学で学生とともに、施設のひと月分の食事内容と栄養についてチェックする機会がありました。

おかず(主菜と副菜)は同じ献立で、主食は、それぞれ患者さんの噛む力、飲み込む力に合わせ、食べやすい状態に調整したものでした。

「普通に炊いたごはんの通常の1人前の120g」「普通に炊いたごはんの少なめ60g」「ごはんをおかゆにしたペースト状にしたごはん60g」、「完全なゼリー状のごはん60g」の4パターン。

東京アメリカンクラブ
一夜だけ、会員制クラブの扉が開いた──東京アメリカンクラブ「バンケットショーケース」で出会う、理想のパーティー
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中