最新記事

心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた禅僧が教える悩まないコツ

2024年4月23日(火)16時09分
枡野 俊明 (曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー)*PRESIDENT Onlineからの転載

【変わるのは相手ではなく「自分」】

こうしてほしいと相手に願うことは、基本的に自分の価値観や尺度の押しつけでしかありません。

そこで視点を百八十度変えます。相手を変えるのではなく、自分が変わろうと考えるのです。相手を変えようとするのは、相手に期待することですが、その気持ちをあっさり捨て去ります。

いままでは嫌な部分に触れると相手のすべてを否定したくなったかもしれませんが、それをやめます。受け入れるのです。

受け入れるといっても、肯定するのとは違います。受け入れるとは、「こういう人なんだな」と、まずは、あるがままを認めることです。人はそれぞれ生まれ育った環境があり、経緯があります。こんな嫌なものを出してくるのは、その人の歴史がそうさせていると理解してあげるのです。

そんな姿勢で接していけば、気持ちに余裕が生まれます。すると相手は、いつもと感じが違うなと気づきます。自分を拒絶していたものが和らいでいる。そう感じただけで、おもしろいことに、その人のいい部分が自然と出てくるようになったりするのです。

【人間関係は「鏡」のようなもの】

いい部分が出てくれば、やがていい循環を始めます。人間関係は鏡のようなところがあります。悪い部分を出せば、相手も悪い部分を出すし、いい部分を出せばこちらもいい部分で反応するものなのです。

理想的な人間関係は、お互いにいい面ばかりを引き出すような関係性です。人は誰しもよい部分と悪い部分を半々に持っているのですから、なるべくいい部分でつき合うことができれば問題は起こりません。

苦手だと感じていた相手にいいなと感じる行動があれば、それを評価し、ほめましょう。誰しも欠点を指摘されるとカチンときますが、ほめられれば嫌な気はしません。

【「いい部分」を見て接すれば欠点は気にならなくなる】

相手が気遣った行為を示してくれれば、「有難う」という感謝の言葉を伝えます。ほめて感謝をする。

なるべくいい部分を見て接することで相手との関係性が変わってくれば、相手の欠点は次第に気にならなくなります。

自分の価値基準や理想を相手に押しつけている限り、関係はよくならず、自分自身が辛くなります。人を変えようとするのは、どこか傲慢ごうまんなことなのです。

相手に対する視点をそのように持ち変えれば、人間関係の問題はぐんと減っていくと思います。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、中国製半導体に関税導入へ 適用27年6月に先送

ワールド

トランプ氏、カザフ・ウズベク首脳を来年のG20サミ

ワールド

米司法省、エプスタイン新資料公開 トランプ氏が自家

ワールド

ウクライナ、複数の草案文書準備 代表団協議受けゼレ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中