腰痛リスクを低減できる「正しい座り方」とは? 「背もたれに寄りかかる」のがNGとは限らない
すり足や小股でラクをするのはやめよう
また、歩く時にお腹を使えていないと背骨のS字カーブが失われ、地面からの衝撃が背中や腰まわりにダイレクトに伝わって腰痛になりかねません。坂道を上るような感覚で歩いてお腹をしっかりと使い、腰痛を予防しましょう。
ところでなぜ、お腹を使った歩き方ができないのかというと、お腹を使わずに歩くほうがラクだから。お腹の筋肉を使えていない人は、脚を持ち上げられずにすり足気味だったり、そろそろと小股で歩いたりしているはずです。恐らくラクな歩き方がクセになっているのでしょう。
脚を高く上げて大股で歩くほうが足腰に適度な負荷がかかるため、必然的に筋力低下を防ぐことができるのですが、人間はついラクなほうに流されてしまうのです。
このように歩き方ひとつとっても、日常生活の中でいかに筋肉を使っていないかがわかります。ラクする日常生活=ふだんからラクな動き方をしていると筋力が低下して、ちょっとからだを動かしただけで疲れやすかったり、からだに痛みが出たりして、からだ全体が「弱く」なってしまうのです。
座る時もお腹に力が入っているかが重要
正しい座り方(座位姿勢)も運動学で定められています。座り方の種類はさまざまあり、椅座位(イスに座った状態)、長座位(上半身を起こして両足を伸ばした状態)、半座位(上半身を45度程度起こした状態)などと呼びます。ここでは椅座位について説明します。
イスに座った時の姿勢の取り方のポイントはまず、あごを引くこと。この時、お腹に力が入るかが重要になります。ただ、座っている時にお腹の筋肉を使っているかどうかは、なかなか実感できないと思います。あごを引くとお腹に力が入るという感覚をつかむために、簡単なセルフチェックをしてみましょう。
イスに深く腰かけた状態で、視線を落とさずに人差し指であごを押してみましょう。後ろに倒れないようにするために、お腹にぐっと力が入りませんか? これが座位姿勢でのお腹の力の入れ方で、からだが軸からブレた時に力を発揮するのが、体幹の深部にある腸腰筋なのです。
1日平均7時間座る日本人に大事な筋肉
図表2の右図のようにあごが前に突き出ていると、腸腰筋に力は入っていません。また、あごを引いた時に顔が下を向いてしまっていても、腸腰筋に力が入りません。左図のように顔と視線はほぼ水平を保ったまま、あごを引くようにしましょう。
出所=『読んで防ぐ腰痛の本』
直立同様、座位の場合も姿勢保持のために抗重力筋が重要な役割を果たしています。腸腰筋も抗重力筋の一部で、抗重力筋がはたらいているかどうかは実感しにくいのですが、1日平均7時間も座っている日本人にとっては特に大事な筋肉です。
座位の場合も見た目の「形」ではなく、どこの筋肉を使っているかが重要になります。