最新記事
ヘルス

細胞にストレスとなる「毒」が健康に役立つ? 老化原因物質を無毒化し優れた抗酸化作用をもつ植物成分とは

2023年6月9日(金)16時45分
マックス・ルガヴェア(健康・科学専門ジャーナリスト)、ポール・グレワル(内科医) *PRESIDENT Onlineからの転載

幅広いポリフェノールの効果

要するに、ポリフェノールが豊富な食品を摂ることは、細胞に対してストレスを解毒し、適応し、抵抗力を高めるトレーニングをさせるようなものだ(ブロッコリー、ニンニク、タマネギ、ポロネギ、卵、ホウレンソウ、ケール、グラスフェッドビーフ、魚、ナッツ類など、硫黄が豊富な食品をたくさん食べることによって、「あらゆる抗酸化物質の母」と言われるグルタチオンのさらなる産生が期待できる)。

ポリフェノールにはそれぞれ固有の利点があるが、科学はとりわけ有益なものを明らかにしている。たとえばエクストラバージンオリーブオイルに含まれるオレオカンタールは、体内の老廃物の処理システムであるオートファジーによる自浄プロセスを促進し、脳が自らプラークを掃除するのを助けることがわかっている。

またパセリやセージ、ローズマリー、タイムに豊富な「アピゲニン」というフェノール類は、神経発生を促し、シナプスの結合を強化する。たぶん、サイモン&ガーファンクルのあの名曲は、アピゲニンが霊感を与えてくれたおかげで生まれたのだ!

ほかにも、よく知られているポリフェノールと、それぞれの利点を図表2に挙げておこう。

図表2 代表的なポリフェノールの種類と役割

『脳が強くなる食事 GENIUS FOODS』P.407より


認知機能が改善するブルーベリー

先ほど紹介したポリフェノールを豊富に含む食品の中から、ブルーベリーをピックアップしよう。

一般的に食べられている果物や野菜のなかでも特にブルーベリーの抗酸化作用が高いのは、「フラボノイド」が豊富に含まれているからだ。フラボノイドは、ジーニアス・フードに多い多価(ポリ)フェノールの仲間だ(エクストラバージンオリーブオイルに含まれるオレオカンタールもフェノールの仲間だ)。

ブルーベリーに含まれるフラボノイドのうち、最も多いのはアントシアニンだ。これは血液脳関門を越えて脳に入り、記憶を処理する部位のシグナル伝達を強化するという。驚いたことに、このアントシアニンは海馬に蓄積するらしい。

私の友人で、シンシナティ大学医学部コグニティブ・エイジング・プログラムのディレクターを務めるロバート・クリコリアンは、ブルーベリーの記憶機能の効果を研究する分野の第一人者だ。クリコリアン博士は、ブルーベリーを摂ると認知機能が改善することを証明する論文を発表している。その一部を紹介しよう。認知症を発症するリスクのある高齢の被験者が、ブルーベリーのサプリメントを12週間摂ると記憶機能が改善し、抑うつ症状が軽くなり、空腹時の血糖も減ったという。

観察研究でも、説得力のある結果が出ている。1万6010人の高齢者を対象にした6年にわたる調査では、ブルーベリー(とイチゴ)を摂取した場合に、認知機能の老化が最大で2.5年遅れたという。また最近のレビューでは、人間が一般的な果物を摂ることと認知症のリスクとには何の関係性も見られなかったが、ベリーには見られたという。つまり、ベリーが認知機能の低下を抑制していたのだ。


●買うときの注意と食べるときのヒント●
新鮮なブルーベリーが望ましいが、冷凍のブルーベリーでもかまわない。冷凍ものは、たいていは生のものよりずっと低価格だ(置いてある店も多い)。だが必ずオーガニックのものを選ぼう。ブルーベリーは、スムージーやサラダ、おやつとして食べるにも最適だ。
ベリー類は、それぞれに固有の有益な成分が含まれ、どれも脳のためになるようだ。ブルーベリーの代用になるものにはブラックベリー、ビルベリー、ラズベリー、イチゴがある。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中