最新記事
ヘルス

細胞にストレスとなる「毒」が健康に役立つ? 老化原因物質を無毒化し優れた抗酸化作用をもつ植物成分とは

2023年6月9日(金)16時45分
マックス・ルガヴェア(健康・科学専門ジャーナリスト)、ポール・グレワル(内科医) *PRESIDENT Onlineからの転載

植物の「有毒物質」が薬になる


Sola dosis facit venenum――あらゆるものは毒であり、毒なしにはありえない。害になるかどうかは服用する量によって決まる――パラケルスス

えっ、ストレスフルな食品? 確かに、聞いたかぎりでは、あまりいいものには思えない。だが、あなたが毎日食べている身体にいい食品のほとんどは、「細胞の」レベルではストレスフルだ。

あらゆる生物が考えるのと同じように、植物だって食べられたくはない。ところが植物は、ちょっと不利な立場にある。彼らは捕食者から走って逃げることも、噛みついたり武器を振りかざしたりして闘うこともできないからだ。代わりに植物は、昆虫や菌類、細菌にとって有毒な物質を合成し、化学的な力で身を守っている。つまり自然界の植物の多くは、化学物質で身を守っているのだ。

たとえば、オリーブオイルに含まれる「オレオカンタール」、赤ワインの原料となるブドウに含まれる「レスベラトロール」、ウコンに含まれる「クルクミン」などだ。実をいうと、私たちは野菜をたくさん食べることで、このような化学物質をふんだんに身体に取り入れている。そして、これらの物質が身体に与える影響は少しずつわかってきてはいるものの、そのほとんどは、まだ名前さえついていないのだ!

抗酸化物質の産生を促す「ポリフェノール」

こうした化学物質の1つに、ポリフェノールがある。

これは、身体にいいことで有名な植物成分の総称だ。近年の研究によると、ポリフェノールには幅広い抗酸化作用があり、加齢に関わる炎症、ガンや心血管疾患、認知症などの慢性疾患から守ってくれる働きが注目されている。ポリフェノールが人体におよぼすはっきりしたメカニズムはわかっていないものの、ホルミシスがそれを説明するものとして浮上している。

代表的ないくつかのポリフェノールと、それが豊富な食品を挙げよう(図表1)。

図表1 ポリフェノールが含まれる食品

『脳が強くなる食事 GENIUS FOODS』P.407より

こうした成分が身体にいいのは、細胞レベルでわずかなストレスが生じるためでもある。ポリフェノールを摂ると、抗酸化物質の産生を促す遺伝子の活動スイッチが入り、細胞が防御態勢をとる。ポリフェノールに誘発された抗酸化物質は、フリーラジカル(※)に対しても、有名なビタミンEやCのように優れた除去作用を発揮する。

こうした抗酸化物質は「1対1」で作用する。たとえば、ビタミンCの1つの分子が、1つのフリーラジカルを無毒化する。ところがポリフェノールに誘発されてつくられるグルタチオンのような抗酸化物質は、数えきれないほどのフリーラジカルを無毒化できるという。

※フリーラジカル(不対電子)......電子は一般的に対の状態で存在しているが、対をなさずに単独で存在する分子、または原子。フリーラジカルは、周りの分子から電子を1つ奪って安定しようとするため、細胞を変性させる。老化現象を引き起こす原因と言われている。

日本
【イベント】国税庁が浅草で「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産登録1周年記念イベントを開催。インバウンド客も魅了し、試飲体験も盛況!
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、来年の消費財下取りに89億ドル割り当て スマ

ビジネス

中国、26年投資計画発表 420億ドル規模の「二大

ビジネス

中国製造業PMI、12月は9カ月ぶり節目回復 非製

ワールド

台湾は警戒態勢維持、中国船は撤収 前日まで大規模演
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中