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動脈硬化の原因となり毎年50万人超が死亡 米国で禁止され日本では使われている「絶対に口にしてはいけない」食品とは...

2023年6月23日(金)12時38分
デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーヴン・J・シンプソン *PRESIDENT Onlineからの転載

専門家が一番危険と言う物質

加工食品メーカーは、人工的に修飾した分子を食品に加えることもある。この悪名高い例が、「トランス脂肪」だ。

トランス脂肪とは、植物から抽出された健康的な不飽和油を、水素化(水素原子を付加)することで、工業的に製造される脂肪である。なぜこんなことをするかといえば、安価な液体油を固体化させることができ、それをバターの代わりにピザやパイ、電子レンジポップコーン、ドーナツなどの製品に使うと、パリパリ、サクサクとした食感が得られるからだ。

また健康的な油をこのように変化させることで、油とそれを含む超加工食品の寿命を延ばすこともできる。残念ながら、トランス脂肪はそうした歯触りがよく長期保存の利く食品を食べる人々の寿命を延ばすことはない。

工業的に製造されたトランス脂肪が、現在あるすべての脂肪の中で最も危険だという点で、健康管理の専門家の意見は一致している。世界保健機関(WHO)の推計によれば、トランス脂肪の摂取が原因で、毎年世界で50万人以上が心臓病で亡くなっている。

日本では禁止されていない

books20230623.jpg2005年のデンマークをはじめ、アイスランド、オーストリア、スイスなど一部の高所得国でトランス脂肪が禁止されているにもかかわらず、これだけ多い人数なのだ。アメリカは、2018年になってようやく使用を禁止した。

その後ニューヨークとデンマークで行われた研究は、心臓病による入院と死亡の大幅な減少を示している。トランス脂肪は、今も多くの低中所得国と一部の〔日本を含む〕高所得国の食品の重要な一角を占めている。

たとえば私が暮らすオーストラリアでは禁止されていないし、加工食品のメーカーにはこの有害物質を使用しているかどうか、どれだけ使用しているかを表示する義務さえないのだ。

デイヴィッド・ローベンハイマー(David Raubenheimer)

シドニー大学生命環境科学部栄養生態学教授およびチャールズ・パーキンス・センター栄養研究リーダー
オックスフォード大学で研究員および専任講師を10年間務めた。世界中の大学や会議で講演を行っている。スティーヴン・J・シンプソンとの共著に『The Nature of Nutrition: A Unifying Framework from Animal Adaptation to Human Obesity』(未邦訳)がある。シドニー在住。

スティーヴン・J・シンプソン(Sthephen J. Sinpson)

シドニー大学生命環境科学部教授およびチャールズ・パーキンス・センター学術リーダー
主な受賞歴に王立昆虫学会ウィグルスワースメダル、オーストラリア博物館ユーリカ賞、ロンドン王立協会賞、オーストラリア勲章第二位など。イギリスやオーストラリアのメディアやテレビにたびたび取り上げられている。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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