最新記事
ヘルス

62歳の医師が「ラーメンのスープを最後まで飲み干す」理由 塩分の摂り過ぎより高齢者が注意すべきことは?

2023年5月29日(月)18時20分
和田秀樹(精神科医) *PRESIDENT Onlineからの転載
豚骨ラーメン

※写真はイメージです K321 - shutterstock


高齢者の食生活は何を心がけるべきか。医師の和田秀樹さんは「私は、ラーメン店に足を運んだときは、基本的に『ラーメンスープ』を飲みきっている。高齢になると、腎臓が塩分を貯留する能力が落ちるため、塩分の摂りすぎどころか低ナトリウム血症のほうが心配だ」という――。

※本稿は、和田秀樹『80歳の壁[実践篇]幸齢者で生きぬく80の工夫』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

高齢者は「腹八分目」ではなく、「腹九分目」を心がける

さて、本稿では高齢者にお勧めの「食べ方」について、お話ししていきましょう。まずは「どれくらい食べるか(=どれくらいのカロリーを摂取するか)」です。

じつは、年をとっても、体が必要とするカロリー量は、思うほどには変わりません。

必要とするエネルギー量には、身体活動レベル(体をどれくらい動かすか)の違いによって幅がありますが、18~29歳の男性で2300~2650キロカロリーほど必要なのに対し、75歳以上でも1800~2100キロカロリーは必要です。

後期高齢者になっても、青年時代の80%近くは必要なのです。女性の場合も、必要とするカロリー量はすこし減りますが、「若い頃の8割弱は必要」という比率に変わりはありません。

しかし、現実には、若い頃の「8割」も食べている高齢者は、ごくまれです。唐突なようですが、私は、それを貝原益軒の『養生訓』の悪しき影響と見ています。3世紀以上も前のこの本の影響で、日本では「腹八分目」が健康上の「国是」のようにされてきたからです。

実際、高齢になると、今も「粗食」をむねとする人が少なくなく、高齢者の多くは、必要カロリー量を摂取していません。そして、低栄養状態に陥り、筋肉量が落ち、フレイル(健康な状態と要介護との中間の状態)への道を歩んでいる人が少なくないのです。

高齢になると、食欲が落ちていくにもかかわらず、「腹八分目」を心がけたりすると、いよいよ栄養不足になって、寿命を縮めることになりかねません。

たしかに、40~50代までは、「栄養の摂りすぎ」による生活習慣病が心配です。しかし、高齢になると、低栄養状態によるフレイル化のほうが、よほど心配なのです。

実際、厚生労働省が発表した「国民健康・栄養調査結果の概要」(令和元年度)によると、65歳以上の人のうち、低栄養傾向の人は男性12.4%、女性20.7%。85歳以上になると、じつに男性17.2%、女性27.9%の人が低栄養傾向にあるとされています。

ことに、低栄養になると、心配なのは「転倒」です。タンパク質不足から筋肉量が落ち、ちょっとしたことでころびやすくなることです。そして骨折が原因で、寝たきりになるケースが少なくないのです。

そこで、私は、高齢者は、「腹八分目」ではなく、「腹九分目」を心がけてはどうかと、ご提案します。暴飲暴食は避けながらも、食べたいものを食べ、量的にも満足感のある食事を摂る――それが、私のいう「腹九分目」の意味です。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ワールド

ロシア中銀、欧州の銀行も提訴の構え 凍結資産利用を

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ワールド

IS、豪銃乱射事件「誇りの源」と投稿 犯行声明は出
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 8
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 9
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中