最新記事
日本社会

今や満員電車でリュックを前に抱えるのは「マナー違反」 鉄道各社「荷物は手に持って」、その狙いは?

2023年4月10日(月)17時00分
枝久保 達也(鉄道ジャーナリスト・都市交通史研究家) *PRESIDENT Onlineからの転載

「迷惑行為ランキング」で手荷物マナーが1位に

筆者は恥ずかしながらこの変化にまったく気付いていなかったので、どのような事情があったのか東京メトロに聞いてみた。すると、マナーポスターを担当する本社広報部と公益財団法人メトロ文化財団の打ち合わせの中で「車内が混雑してきたときは前に抱えても邪魔」との問題意識があがり、すべての時間帯で推奨できる「足元に持つ」形に統一したという。

関西鉄道協会も東京メトロもアプローチはやや異なるが、本来は「周りへの配慮」を伝えたいところ、荷物の持ち方ばかりに注目が集まってしまうことから、シンプルなメッセージに改めたという点が共通していると言える。

鉄道各社にとって手荷物マナーはどの程度の位置付けなのだろうか。全国の民営鉄道が加盟する日本民営鉄道協会は2000年以降、乗客に対して利用時に迷惑と感じる行為について「駅と電車内の迷惑行為ランキング」を発表している(3つまで選択可)。

このうち「荷物の持ち方・置き方」について、2012年から2018年の推移を見てみると、8位(17.0%)、6位(20.5%)、6位(22.3%)、6位(23.9%)、4位(27.3%)、3位(29.8%)、1位(37.3%)と右肩上がりにランクアップし、ついに2018年に1位になった。

「スーツ姿にリュック」の流行が要因か

2018年から関東大手民鉄9社(東急、小田急、京王、京急、東武、西武、京成、相鉄、東京メトロ)と関西大手民鉄5社(近鉄、南海、京阪、阪急、阪神)の地域別ランキングが発表されているが、同年の「荷物の持ち方・置き方」は関東1位、関西2位だった。

なぜ2010年代に手荷物マナーが注目されたのか。ここにはいくつかの要因が考えられる。そもそも車内がすいていれば(手回り品として認められた範囲であれば)どのような大きさの荷物であっても問題ないが、混雑が激しくなるほど小さな荷物でも影響は大きくなる。混雑という観点で見れば、大手民鉄16社(前記14社と名鉄、西鉄)の輸送人員が2011年の93億9000万人から2018年の105億1000万人まで高い伸び率で増加したことも背景のひとつだろう。

ただそれ以上に影響していると思われるのがリュックサック(バックパック)の流行だ。2018年1月23日付プレジデントオンライン〈なぜ"スーツにリュック"の人が増えたのか〉は、「『スーツ姿にリュックを背負って電車通勤する人が増えた』――と初めて記事に書いたのは2016年の冬だった。これ以降もリュック姿のビジネスパーソンは増え続けているように感じる」との書き出しで始まる。2016年以降、ランキングで「荷物の持ち方・置き方」が増加したことと、リュックの流行到来は無関係ではないだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

仏ルノー、25年は純損失109億ユーロ 日産株巡る

ビジネス

エールフランスKLM、25年営業利益は過去最高の2

ワールド

仏会計検査院、歳出削減促す 増税頼み限界

ビジネス

日立労組、26年春闘のベア要求1万8000円 一時
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 5
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 8
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 9
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 10
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中