最新記事

牛乳=骨太は間違いだった! 「牛乳をたくさん飲む国ほど骨折が多い」衝撃の研究結果

2023年3月31日(金)12時35分
生田 哲(科学ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載
牛乳の入ったコップを持つ女の子

*写真はイメージです anon_tae - shutterstock


「牛乳を飲めば背が高くなり、骨太になる」というのは本当なのか。科学ジャーナリストの生田哲さんは「栄養が十分であれば、身長の高さは遺伝で決まる。牛乳を飲めば背が伸びるわけではない。また、最新の研究では牛乳を飲むと骨折するリスクが高まる危険性が指摘されており、骨太になるという根拠はない」という――。

※本稿は、生田哲『「健康神話」を科学的に検証する』(草思社)の一部を再編集したものです。

「牛乳を飲めば背が高くなる」は本当か

今、牛乳を口にしている子どもから昔を懐かしむ中高年まで、牛乳を健康にいい飲み物と信じて疑わない。

牛乳は子どもの背を伸ばし、骨を丈夫にするといわれてきた。牛乳は、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルを豊富に含み、栄養価の高い完全栄養食品と喧伝されてきた。牛乳は健康にいいから、自分だけでなく、子どもにもどんどん飲ませようと思っている中高年も多い。そこで牛乳の健康効果について検証していこう。



【神話】
子どもが牛乳を飲むと背が高くなる

戦後、日本人は背が高くなったといわれる。牛乳・乳製品メーカーが「牛乳には成長と健康に必要なタンパク質、脂質、糖質、カルシウム、ビタミン、カリウム、リン、鉄などがバランスよく入っています」「栄養満点の完全栄養食」と盛んに宣伝するため、「牛乳を飲むと背が高くなる」というメッセージが国民にくり返し伝えられた。このため国民は背を伸ばすには牛乳を飲むのが当たり前と思うようになったのだが、本当に子どもが牛乳を飲むと背が高くなるのだろうか?


【科学的検証】
ウソである。

幕末の日本人がアメリカ人を観察し、身長を高くするには、牛乳を飲めばいいと思った。では、子どもが牛乳を飲むとアメリカ人のように背が高くなるのか? No.決してならない。

栄養が十分であれば、身長の高さは遺伝で決まる

栄養失調の子どもに栄養を与えれば、背が伸びる。だが、すでに栄養十分な子どもが牛乳を飲んだからといって、背は伸びない。栄養十分であれば、背の高さは遺伝で決まるからである。牛乳は、子牛を成長させるのに最適の栄養源である。母乳はヒトの赤ちゃんを成長させるのに最適の栄養源である。もしヒトの赤ちゃんが牛乳を飲んだら、どうなるか?

reuter_20230331_114230.jpg
牛乳と人乳100g中に含まれる栄養素の比較(出所=『「健康神話」を科学的に検証する』p.264)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中