悪癖の原因は「意志の弱さ」ではない──脳の仕組みを知って悪習慣ループを脱出せよ

HOW TO BREAK THE HABIT LOOP

2023年3月23日(木)11時40分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

もう1つの案は、フェイスブックで情報が共有されればされるほど、その投稿が上位に表示される仕組みの見直しだ。現在、フィードに表示されるコンテンツの位置を決定するアルゴリズムによって、フィードの上には「いいね!」の多いコンテンツが表示されるようになっている。これについてウッドは、検証されていないニュースコンテンツは、モデレーターに承認されるまで表示の優先度を下げるよう提案している。

また、「シェア」や「いいね!」ボタンに加え、「ファクトチェック」や「スキップ」ボタンを追加すれば、ニュースを習慣的にシェアする行為を抑制できるという。

このように習慣の引き金となるキューを除外するか変えてしまえば、習慣的に情報をシェアしているユーザーも偽情報をシェアする前に立ち止まって考えるようになるだろう。

この考え方は、新年の誓いを継続する際にも活用できる。例えば、仕事帰りにジムに通うなど、何かを習慣化しようとしたとき、その計画を台無しにする視覚的なキューに注意することが大切だという。

ウッドによると、エクササイズをするという一年の計を立てた人にありがちなのは、仕事の後に運動しようと決めても、帰宅するといつの間にかテレビの前に寝転がって、ポテトチップスを食べてしまっていることだ。このとき大半の人は意志の弱さのせいと考え、「今日はすごく疲れているから」「やる気が出ない」「そもそも運動に向いてないんだ」などと自分に言い聞かせる。

だが、ジムに行かなかった本当の理由は違う。帰宅した際に見慣れたキュー(ソファとキッチン、置いてあったポテトチップスの袋など)が目に入り、反射的に習慣性のある行動を取ってしまったのだ。

解決策は、ジムに行く前に自宅で一連の習慣的な行動を促す視覚的なキューを目にしないようにすること。ジムに直行するか、新しい行動を促すきっかけをつくることだ。エクササイズを始めたいなら、ネガティブなきっかけを避けるだけではなく、ポジティブなきっかけを加え、エクササイズしやすい環境を整えるのが肝心だとバークマンは指摘する。

そこで彼が提案するのは、時間を確保し、ランニングシューズを「目立つ」場所に置くなど、環境に物理的な変化を与える方法だ。その行為を楽しいものだと思わせ、新しい習慣を確立する「ニンジン」をぶら下げることも重要だという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中