最新記事

メンタルヘルス

「先延ばしが健康に影響を与える」可能性について、最新の研究結果

Procrastinating May Have Actual Health Impacts: Study

2023年1月7日(土)09時56分
アテナ・チャン
先延ばし

SIphotography-iStock

<先延ばしが日常生活の混乱のもとであることは間違いないが、健康にも実際に悪影響を与える可能性に関する研究が発表された。しかし、自分で克服する方法もある>

そもそも先延ばしとは、結果的に不利益を被ることがあらかじめわかっていても、行動を意図的かつ自発的に遅らせる行為のことを指す。それでもやめられないのが先延ばしだ。

先延ばしが日々の生活やスケジュールの混乱のもとであることは間違いないが、実際に健康に影響を与える可能性についての研究が発表された。

これまでの研究によると、先延ばしと健康に関連する証拠はないとされてきた。しかし、大学生を対象とした最新研究では、心身の健康と先延ばしに相関関係がみられたという。

スウェーデンの8つの機関が3525名の大学生を対象に「先延ばしスコア」を自己報告でつけてもらい、9カ月後にフォローアップ調査を行った。そのデータを分析したところ、「先延ばしスコア」の高い人は、健康上の問題を報告する例が多く見られたという。

「このコホート研究(要因対照研究)は、先延ばしがメンタルの問題、不健康なライフスタイルなど、心理社会的な健康要因と相関関係がある」と研究者は指摘している。

具体的には、うつ病、不安障害、ストレス症状の悪化、睡眠の質の低下、身体活動の低下、また身体の「痛みの無痛化」なども見られた。さらには経済的困難に直面する人が多く、孤独感の増加などの影響も見られたという。

先延ばしが直接的な問題を引き起こしているという因果関係までは証明されていないが、「慢性的な先延ばし」が間接的または潜在的に健康へ悪影響を与えていることが示されたという。

ストックホルムのソフィアヘメット大学のフレッド・ヨハンソン主任研究員は、先延ばしする傾向にある人は、ストレスを回避するための運動など、ウェルネス行動の着手が遅れる傾向にあることからも、健康への影響の背景を説明できると述べる。

特に大学生は「自由」をスケジュールに組み込む社会構造にいないことから、先延ばししやすいと指摘する。2007年の研究分析によると、大学生の80~95%が「定期的に」先延ばしをしていることが報告されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ戦争「世界的な紛争」に、ロシア反撃の用意

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中