「まず目の前の小さなごみを拾う」ゴミ屋敷清掃のプロに学ぶ、年末の大掃除
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<クリスマスや正月の準備、帰省と、多くのタスクに追われがちな年末年始。ストレスで途方に暮れないように自分の心を安定させるにはどうするか?>
エッセイストで翻訳家の村井理子さんは、多数の連載を抱えながら、年に何冊もの翻訳書や自著を出版し、プライベートでは思春期の双子の男の子の親であり、義父母の介護もする主婦でもある。
多くのタスクをこなしているにもかかわらず、穏やかでいる秘訣とノウハウを『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術』(CCCメディアハウス)より抜粋する。
目の前の小さなことから片づける
いままでの人生で、「これは確実にピンチだ」と思ったときは二度あった。
一度目は47歳で心臓手術のために入院したときで、二度目はその翌年、兄が突然死し、彼が住んでいたアパートを片づけることになったときだった。心臓手術を終えて1年後に、兄のアパートの片付けをしていたのだ。こんな大ピンチは人生で何度も起きはしないだろうという程度の大ピンチの連続だ。
どうにかしてそれを乗り越えて、いま思うのは、目の前の小さな問題をひとつひとつクリアしていくのが、確実に最短コースだということ。なぜなら、大きな問題は、小さな問題の集合体だからだ。
ゴミ屋敷の片づけをテーマにした、とある清掃会社のYouTubeチャンネルで、社長がゴミ屋敷の片づけのコツを解説していた。山のように積み上がった大量のゴミを前に、まず何をするのが大切か。
それは、まずは自分の足元のゴミを拾い、周囲に一定のスペースを確保することだという。確保されたスペースにじっと留まり、こつこつと周囲のゴミを袋に詰めていく。まずは自分の足元をクリアにするのが、ゴールへと続く道になるのだそうだ。学びが多すぎる。
私が人生最大級のピンチに見舞われたときも、無意識ではあったが同じことをしていた。とにかく、目の前に山ほど積み上がった問題を、ひとつひとつ、片っ端からクリアにしていった。嫌だな、面倒だな、最悪だなと思いつつ、まずは大きな問題から手をつけ、そして小さな問題を見落とすことないよう注意しながら、処理していった。
ゴミに溢れた兄の部屋を掃除したときは、最大サイズのゴミ袋を買ってきて、バサッと開いて、目の前にある小さなゴミを片っ端から、黙々と袋に詰めていった。そうして作業していくうちに、徐々にゴールが近づいてくることがわかり、絶望感は消えていった。あとは一直線に進むだけだった。
目の前のことを、こつこつと。これが大事なようだ。
『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術』
村井理子[著]
CCCメディアハウス[刊]
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