最新記事

この時期急増「カブトムシのお葬式」 昆虫葬から見える日本人の死生観とは

2022年8月27日(土)14時00分

「昆虫の墓」の前での供養

月に一度、僧侶を招いて「昆虫の墓」の前で供養する 写真提供=アビーコム

欧米人の場合、小動物のペットが死んだ場合は合理性を優先し、躊躇なくゴミに出すことが多い。しかし、日本人の死生観は独特だ。誰しも、幼い頃、小動物の死に際して「墓」をつくり、手を合わせてきたではないか。仮にカブトムシやバッタなどの昆虫といえども、その死を無下にできないのが、われわれ日本人なのだ。

コロナ禍で在宅時間が増えた影響で、小動物や観賞魚を飼育する人が増えているという報告もある。昆虫葬は今後、ますます需要を伸ばしそうな勢いだ。

さて、同社では昆虫の遺骸を、持ち込みと郵送の両方で受け付けている。郵送の場合はまず、アマゾンやYahoo!ショッピングで「昆虫葬 郵送キットワイド」を購入する。キットには返送用の箱や防虫剤、乾燥剤、クッション剤などが入っている。

昆虫の遺骸を納めてポストに投函(とうかん)すると、同社の花壇に据え付けられた「昆虫天国」と呼ばれる昆虫専用の合祀(ごうし)墓に納められる。

クワガタ、セミ、トンボ、バッタ、テントウムシ......

昆虫葬 郵送キット

「愛ペットセレモニー尼崎」のHPより

郵送での受付の場合、厚さ2.2センチ以下の昆虫(クワガタなど)であれば郵送料と埋葬、供養料込みで4950円。さらにサイズの大きい昆虫や、複数の昆虫を供養して欲しい場合は、7150円~となっている。また、来園での受付なら、3300円だ(いずれも一匹あたり)。

対象の昆虫はカブトムシ、クワガタ、セミ、トンボ、チョウ、テントウムシ、バッタ、カマキリなど、絶滅危惧種以外であれば大体は受け付けている。ほとんどは、カブトムシかクワガタだ。中には、ヘラクレスオオカブトなど全長20センチ近くにもなる外来の昆虫も、全国各地から持ち込まれるという。

むろん昆虫には骨格がないので、同社では火葬はしない。「墓」のカロートの底は土壌になっていて、自然に分解される仕組みだ。昆虫の墓前では月に一度、同社と協力関係にある僧侶が回向してくれるという。

運営会社のアビーコムの担当者は「子供が接する最初の命は昆虫が多い。飼育しても、いずれ死んでしまうが、その時に親がどう対応するかが情操教育の上で大切。昆虫葬を通じてぜひ、供養の心を学んでほしいと考え、この事業を始めた」と話す。

愛ペットグループの他にも、ネットで検索をかければ昆虫葬を手がける複数の業者がヒットする。首都圏で展開する別の業者の場合、「タランチュラ等のクモも独特の美しさから観賞用や可愛さからペットとされる方が増えており、様々なご相談を承っております」とし、費用は同社が手がける最安値の「ハムスター・小鳥・リスの引き取り合同埋葬プラン」と同等の価格設定で1万円となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 8
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中