この時期急増「カブトムシのお葬式」 昆虫葬から見える日本人の死生観とは
欧米人の場合、小動物のペットが死んだ場合は合理性を優先し、躊躇なくゴミに出すことが多い。しかし、日本人の死生観は独特だ。誰しも、幼い頃、小動物の死に際して「墓」をつくり、手を合わせてきたではないか。仮にカブトムシやバッタなどの昆虫といえども、その死を無下にできないのが、われわれ日本人なのだ。
コロナ禍で在宅時間が増えた影響で、小動物や観賞魚を飼育する人が増えているという報告もある。昆虫葬は今後、ますます需要を伸ばしそうな勢いだ。
さて、同社では昆虫の遺骸を、持ち込みと郵送の両方で受け付けている。郵送の場合はまず、アマゾンやYahoo!ショッピングで「昆虫葬 郵送キットワイド」を購入する。キットには返送用の箱や防虫剤、乾燥剤、クッション剤などが入っている。
昆虫の遺骸を納めてポストに投函(とうかん)すると、同社の花壇に据え付けられた「昆虫天国」と呼ばれる昆虫専用の合祀(ごうし)墓に納められる。
クワガタ、セミ、トンボ、バッタ、テントウムシ......
郵送での受付の場合、厚さ2.2センチ以下の昆虫(クワガタなど)であれば郵送料と埋葬、供養料込みで4950円。さらにサイズの大きい昆虫や、複数の昆虫を供養して欲しい場合は、7150円~となっている。また、来園での受付なら、3300円だ(いずれも一匹あたり)。
対象の昆虫はカブトムシ、クワガタ、セミ、トンボ、チョウ、テントウムシ、バッタ、カマキリなど、絶滅危惧種以外であれば大体は受け付けている。ほとんどは、カブトムシかクワガタだ。中には、ヘラクレスオオカブトなど全長20センチ近くにもなる外来の昆虫も、全国各地から持ち込まれるという。
むろん昆虫には骨格がないので、同社では火葬はしない。「墓」のカロートの底は土壌になっていて、自然に分解される仕組みだ。昆虫の墓前では月に一度、同社と協力関係にある僧侶が回向してくれるという。
運営会社のアビーコムの担当者は「子供が接する最初の命は昆虫が多い。飼育しても、いずれ死んでしまうが、その時に親がどう対応するかが情操教育の上で大切。昆虫葬を通じてぜひ、供養の心を学んでほしいと考え、この事業を始めた」と話す。
愛ペットグループの他にも、ネットで検索をかければ昆虫葬を手がける複数の業者がヒットする。首都圏で展開する別の業者の場合、「タランチュラ等のクモも独特の美しさから観賞用や可愛さからペットとされる方が増えており、様々なご相談を承っております」とし、費用は同社が手がける最安値の「ハムスター・小鳥・リスの引き取り合同埋葬プラン」と同等の価格設定で1万円となっている。