若者の「恋愛離れ、セックス離れ」はウソ 内閣府「20代の4割がデート経験なし」の本当の意味
それはともかく、大人たちはとかく自分たちの若い時のことはすっかり忘れて「若者の恋愛離れ」「若者のセックス離れ」などと騒ぎ立てます。お決まりの「イマドキの若いモンは......」と結びつけて納得したがるのは、古代のエジプト文明時代の壁画にも書いてあったように繰り返されるお話です。
しかし、冷静にデータを見れば、「若者の○○離れ」と言われるものの大抵は、事実に反する偏見と誤解による思い込みであることが分かります。
若者の草食化としてよく引き合いに出される「若者のセックス離れ」についても同様です。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の出生動向基本調査に基づき、1987年からの未婚男女の性体験無し率(年齢別)の推移をグラフにしてみました。
「25歳まで性体験なし」男性はずっと童貞のまま?
これを見ると、どうやら男女とも2005年に若者の性体験率がピークを迎え、その後、各年代揃って減少しているように見えます。「若者のセックス離れ」と言いたい人たちは、この2005年を始点とした推移だけを切り取って「ほら、こんなにも減っている」と主張するわけですが、もっと俯瞰してみれば、違う景色が見えてきます。それ以前の90年代、80年代までさかのぼれば、むしろ2005年の数字のほうが異常値であって、現在は通常の状態に戻りつつあると解釈するのが妥当ではないかと思います。
むしろ着目すべきは、25歳以上の男性の童貞率の推移です。1987年から2015年まで童貞率はほぼ20~30%の割合で一定で変わっていないことです。これは、つまり、25歳まで童貞だった男性は、その後もそのまま童貞であり続ける可能性が高いということです。これは、「恋愛強者3割の法則」と対照的に、いつの時代も「恋愛最弱者3割の法則」とでも言えるでしょう。
バブル期→2005年にかけ「処女率が半減」の謎
一方、女性を見ると、1987年、バブル真っ最中での20~24歳女性の64%以上が処女だったのに対して、2005年には処女率36%とほぼ半減に近い状態になった変化が際立っています。
80年代後半から2005年までの間に、一体何があったのでしょう。1980年代中ごろ、バブルの好景気という日本全体を覆い尽くした熱気を反映したように、平成の恋愛至上主義と呼ばれる時代が到来しました。
クリスマスイブはカップルがデートするという文化は実はその頃に誕生したものです。高級レストランで食事を、半年前からシティホテルを予約し、男性は高価なプレゼントを贈るものというデートフォーマットを完成させたのは、雑誌『an・an』(アン・アン)だと言われています。90年代のテレビドラマは、「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」「ロングバケーション」等、恋愛系ドラマが次々と大ヒットしました。
もうひとつ若者の恋愛に必須なツールがこの頃一般化しました。携帯電話です。特に親元に住む学生など若い男女にとって、親の目を気にすることなく、相手と長電話できる携帯電話は若者の行動を大きく活発化させました。