最新記事
医療

目は確実に老化する。白内障、緑内障、そして日本で近年増加中の「失明原因」とは?

2022年2月5日(土)16時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

これらは水晶体の硬化と着色がもたらす調節力ならびにコントラスト感度の低下によるもので、いま見えている世界は、20歳の頃に見えていた世界とは違います。

変化は徐々に起こるため気づいていないだけで、見え方は確実に「老化」しています。桜のピンクも、菜の花の黄色も、新緑の緑も、みんな昔見えていた色とは違うのです。

ただし、水晶体の硬化と着色によるこのような現象は、すべて「生理的老化」であり、生物として当然の変化です。五感が鈍れば世間の嫌なことに感じるストレスも減るし、死に対する恐怖さえも和らぎ、よい面もあります。

ところが、ここに「病的老化」が加わると厄介です。人生に苦難がわき起こります。周りに迷惑をかけます。

眼の「病的老化」としては白内障、緑内障がよく知られていますが、もうひとつ、最近注目されているのが「加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration=AMD)」です。

AMDは欧米人の失明原因のなかでもっとも多く、古くから恐れられてきました。わが国でも近年増加していて、テレビ番組や新聞・雑誌で紹介される機会が増えました。「加齢」と名がつくように、その原因の根底には「老化」があり、誰もが発症する可能性のある病気です。

AMDは、眼球の底(眼底)にある網膜の、特に中心部分が壊れる病気で、まず、見たいところ(視野の真ん中)が見えなくなり、見えない範囲がだんだん広がっていく病気です。厄介なことにひとたび発症したら根治はできず、生涯、失明の恐怖と戦うことになります。

現在の患者数は世界中で約2億人、わが国では約90万人と推定されます。50歳以上の日本人の63人にひとり程度がAMDに苦しんでいることになります。

なんとしても避けたい、高齢になってからの視覚喪失

日本人の平均寿命(2020年)は女性が87.74歳、男性は81.64歳。女性は8年、男性は9年連続で過去最高を更新中であり、それぞれ世界1位と2位(1位はスイス)。

「人生百年時代」というフレーズが囁かれるのもうなずけます。それは、戦後の苦境から努力して這い上がった日本の輝かしい成果と言えるでしょう。

しかし、そう喜んでばかりもいられません。実際には、何不自由なく元気に百歳を迎えられる人は稀で、ピンピンコロリという理想を全うできる高齢者はほんのひと握りです。現実はそんなに甘くありません。

カラダの不調は、どこに生じても不便なものですが、とりわけ高齢になってからの視覚喪失は「非常に厳しい」と言わざるを得ません。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」

ワールド

訂正-米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中