最新記事

医療

3000人を看取った医師が教える「80歳以上が今すぐやるべきこと」

2020年5月13日(水)11時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

kazoka30-iStock.

<「多死社会」化する日本で、人生の最期をどう過ごすか、幸せな死を迎えるためにはどうすればいいか。愛和病院(長野県長野市)副院長で、緩和ケア医の平方眞氏は「人生の最期を考える話し合い」の重要性を指摘する>

現在、日本の年間死亡者数は約130万人で、なお増加傾向にある。2038年には死亡者数がピークを迎え、約170万人となる予想だ。ピークを過ぎても、その後の30年間は、毎年150万人以上の人が亡くなるとされている。日本は急速に「多死社会」に向かっている。

愛和病院(長野県長野市)副院長で、緩和ケア医として3000人以上の患者を看取ってきた平方眞氏によると、今の日本で亡くなる人の多くは、死亡診断書にはがんや肺炎で亡くなったと記載されていても、イメージとしては「老衰9割+がん1割」「老衰8割+肺炎2割」のような感じなのだという。

つまり、ほぼ老衰なのだ。そのため、ほとんどの人が十分生きたと思える年齢であり、その時に死が訪れるのは自然なことだと言える。

今後、病院以外で最期を迎える人が増え、介護施設や自宅などの生活の場での看取りが増えていくのは確実だ。

平方医師は「多死社会=不幸な社会」になってしまうことを懸念している。死を少しずつでも生活の中に取り戻し、死を「忌み嫌うべきこと」として避けることなく、よい死、望ましい死、幸せな死を増やすことができれば、多死社会が不幸な社会になることを防げるという。

そのためにも「人生の最期を考える話し合い」と「緩和ケア」はとても大切――そう考える平方医師は、『人生のしまい方――残された時間を、どう過ごすか』(CCCメディアハウス)を上梓した。

「人生の最終段階」でのさまざまな話し合いをケーススタディとして紹介しながら(ほとんどが実話だという)、人生の最期をどう過ごすか、周囲の人と共に考えることの大切さを訴える一冊だ。

家族が知らなかったエンディングノート

ここで、本書に掲載されているケーススタディを1つ紹介しよう。83歳の男性の事例だ。

男性は、体力と健康にはかなりの自信を持っており、「オレは医者になんか一度もかかったことがない」が口癖だった。しかし、風邪から肺炎を起こし、意識が朦朧とした状態で病院に搬送されてしまう。気管に管を入れ、人工呼吸をしないと助からない状況だという。

救急医から本人の意思を問われるが、家族は答えることができない。その結果、「できるだけのことをしてほしい」と答え、それに応じて救急医は、人工呼吸、心臓マッサージや電気ショック、強い薬を使って男性の命を助けた。

このとき、回復の見込みがない状態の男性に対して、家族は医師から3つの選択肢を示された。

(1)胃ろう、または経管栄養にする
(2)普通の点滴をする
(3)何もしない

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中